福士川渓谷

奥山温泉(立ち寄り湯)

十割蕎麦「雲平」

 

訪問日:2020-11-29 

1998 2002 2006-12-21,22  2010-07-20,21 2016-02-22,23(合計六回宿泊) 
 *記事は2006年宿泊時のものをリライトしています

過去の宿泊記事

 

 

Go To第6弾は峡南(山梨南部)へ。
「船山温泉」は静岡にほど近い山梨県南部町、甲斐の名刹身延山久遠寺から15キロほど下った山間に立つ一軒宿です。

 

船山温泉への道

 

橋を渡って宿へ

 

玄関の銘版

 

近くにこれといった景勝地もなく、温泉自体ほとんど知られていません。
しかし多くのリピーターを持ち、クチコミ・ブログなどでも高評価を保ち続けています。
その理由は温泉旅館に求められるもの全てを「いいとこ取り」した宿だからです。
 
以前は明治創業という「お母さんの味・猪鍋」が売り物の鄙びた一軒宿でしたが、二代目館主が跡をついで1997年全面に全面改築、経営方針を一新しました。

私が最初に訪れたのは、新装オープン間もない1998年。
当時は露天風呂もなく建物は新しく田舎宿らしい風情もなし、ただ猪のモツ鍋という特別メニューがあって、それを目当ての訪問だった記憶があります。
宿泊料金もたしか一万円強だったかと。

食事の時まだ20代後半とおぼしき館主夫婦がご挨拶に見えて、「私たちは良い宿を作るために毎月二日連休を取って色々な宿を訪問し、勉強させていただいております。お客様のお気に入りの宿、これはと思われるサーヴィスがあったら是非教えてください」とのご挨拶。
「この宿は良い宿になるな」と感心しました。
 
そして果たせるかな、数年後「露天風呂が完成しました」との葉書を頂戴したので訪ねてみると、いくつもの驚くべき独自のサーヴィスを採用した宿に変貌していました。
 
この宿のこだわりは挙げればキリがないほどですが、大雑把に列挙すれば以下の通り(7,8は2001年以降)
 1.「ゆっくりしてもらいたい」という配慮からチェックインは午後13時、アウトは午前11時
 2.全館畳敷きにし、スリッパを廃して足袋を使用
 3.部屋で目障りな物(TV、洗面所、冷蔵庫など)は全て収納や目立たないところにしつらえている
 4.各部屋に電動マッサージ機を設置、トイレはウオシュレットはもちろん、ライト、便座カヴァーもセンサー付きオート
 5.風呂はフェイスタオル・バスタオルとも使い捨て、アメニティーも充実(麺棒や髪留めゴム、マウスウォッシュまで)
 6.立ち寄り湯は一切させない
 7.貸し切り風呂は二箇所、随時無料で
 8.食事は個室ダイニングで、徹底的に地の物にこだわって調理、もちろん「熱い物は熱いうちに、冷たい物は冷たいまま」供される
 9.布団はチェックアウトまで敷きっ放し、朝食後もゴロ寝が出来る
10.小学生以下や7人以上のグループはお断り、カラオケやスナック等一切なし、芸者・コンパニオンも呼べない
11.部屋の鍵が2つ用意してある
12.浴衣は予備と交換自由(以前は就寝用パジャマもあり、現在は作務衣常備)
13.少しでも宿泊料金をお客様に還元するため、旅行会社との提携はしない
 
今となっては当たり前と言われるかもしれないサーヴィスも多くありますが、この方針の多くを1990年代後半から行っていたのは注目に値します。
実際、私は当時、4,11,12などこちらで初めて体験しました。
ただし2010年代になって状況が変わったのでしょう、旅行会社との提携はせざるを得なかったようです。

 

熊さんがお出迎え

 

ベッドルーム和室

 

到着が早かったためまだ風呂には誰もおらず、貸し切り風呂から露天まで全てゆっくりと堪能させて頂きました。
泉質は単純硫黄泉16.7度、自然湧出で内湯・露天とも循環・放流併用。
大浴場は18時で男女交代、清掃時間以外終夜入浴可能です。
 
露天のセンスも良し、そして夕刻周辺や川向いの木々がライトアップされるとその景観がまた一変します。
砂防ダムの滝の流れや紅葉がそこかしこで光り、正に夢見心地の入浴を満喫出来ます。
(ライトアップは深夜零時まで)

 

大浴場

 

露天風呂

 

貸切露天風呂

 

貸し切り風呂

 

ライトアップされた庭園
(部屋から)

 

ライトアップされた宿

 

ロビー

 

ワインセラー

 

夕食は「個室ダイニング」でいただきす。
個室のテーブルでライトアップされた庭を眺めながら、地の食材にこだわったメニューをゆっくりと楽しめます。

 

庭園を望むダイニング

 

食前酒と前菜

 

造り:サツキマスと岩魚

 

茜鱒のしゃぶしゃぶ

 

岩魚塩焼き
蕗の薹塩漬け

 

甲州ワインビーフ焼き
タンとフィレ

 

手打ち蕎麦

 

栗と銀杏の焼き込み御飯

 

食事

 

デザート

 

夜食

 

朝はさすがに空気は冷たいですが、雲が取れて青空が広がりました。
 

朝の露天風呂

 

宿の裏山の紅葉

 

宿の横を流れる川

 

朝食も同じダイニング・ルームで。
茶粥・自家製豆腐・虹鱒の塩焼き・煮物などを中心にしたメニューです。
味噌汁も具沢山、お惣菜も可愛い器に七種類。

 

朝食膳

 

惣菜皿・煮物・サラダ

 

ヤマメ一夜干し・温泉玉子・ヨーグルト

 

蕎麦粥・茶粥・クロワッサン・味噌汁・ミルク

 

豆腐

 

公衆電話

 

いまだに固定ファンも多く、アプローチの不便な山間の一軒宿としては根強い人気を保っている様子です。
ただこうしたきめ細かいサーヴィスを行う宿が増たのと、宿泊料も大分高くなって一時ほどの優位性は薄れました。
前述しましたが、新規開業当時には「お客様に宿泊料を還元するため、手数料を取られる旅行会社とは一切契約しません」という方針でしたが、近年は「じゃらん」「楽天トラベル」などに登録もしているというのいも稼働率が落ちてきているのでしょう。
「お得意様割引プラン」のハガキも最初は1,000円引きだったのがここ数年は1,500円引きになりました。


Go Toが終了すればまた多くの宿泊施設にとって厳しい状況が再来すると思いますが、できれば最近多くの宿が採用している高年齢層向けの食事ライトプランで、安価な宿泊料を設定すればまだまだ充分人気宿として維持できるのではないでしょうか。
 

船山温泉 公式HP

 

「船山温泉」チェックアウト後は近くの福士川渓谷へ。

まずは大好きな「六地蔵公園」へ。可愛らしいお地蔵さんが六体、富士山をバックにたたずんでいます。

 

 

 

福士川渓谷は山梨県民にもあまり知られていない紅葉スポットです。
しかし今年は色づきが悪いうえに、名勝「七つ釜の滝」への遊歩道も台風による土砂崩落で通行止めという寂しい状況でしたが、途中珍しい冬桜と紅葉が並ぶ姿を見ることができました。

 

冬桜と紅葉

 

冬桜と紅葉

 

 

 

 

 

そのあとは福士川沿いに約11キロ、「奥山温泉」へ向かいます。
「奥山温泉」は林道のどん詰まりにある公共施設で、山並みを望む露天風呂があって休憩はもちろん宿泊もできます。
入浴料800円、泉質はアルカリ性単純硫黄温泉でph9.7という強アルカリ泉、泉温44.1度で循環放流併用式、露天風呂はかなりのぬるさです。

 

 

 

 


昼食は同地にあるこだわりの蕎麦処「雲平」へ。
三種類の産地から蕎麦粉を選択、さっぱりとした出汁と辛味大根、さらし葱でいただきます。
店主一人で一人前ずつ茹でるため時間がかかりますが、待つだけの価値はあります。
今回は「ひたち(茨城)」産と「会津(福島)」産の地粉で打った蕎麦をいただきました。
十割(とわり)にもかかわらず細くて腰があり、辛味大根との調和も良い。
久々に美味しい蕎麦をいただき満足できました。

 

 

 

 

 

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