9.5 最新デジタルシネマ | オヤジカメラマンのブログ

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若い時は京都太秦の撮影所、木枯らし紋次郎、座頭市、必殺仕事人、暴れん坊将軍など撮影助手として、30でCMキャメラマンとして主に大阪で…今迄観た映画など思った事をぼちぼち書きます。

皆さま、あけましておめでとうございます。 
今年ものんびりゆったりとデジタルシネマ撮影と後処理について語っていきます。

全てが私の個人的な解説ですので信用するかしないかは受け取り側でもう一度検証してご自分で判断なさってください。

私たち撮影監督は撮影するだけでは無く、しっかりと光を考え自然界の事柄も理解し、リアリズムの光(時には心の中のシュールリアリズムも含め)を構築するし、それを映像として捉える事が仕事です。

一番大事な事は観客の心に寄り添い映像を構築する事だと思っています。

その為には簡単な物理から電気工学、光学、そして科学と化学を理解しないとダメだと思います。

難しく考えないで、中学、高校位で充分です。
sin.cos.tan.2次関数、指数、対数、オームの法則、電子、原子、分子、一般相対論を少し…

10の前に9の裏解説を行います。

9.最新デジタルシネマの記事では2001年の
日本撮影監督協会関西が
ソニー、イマジカウェスト、
松竹京都映画、映像京都、 
嵯峨映画、富士フイルム、
コダック、報映産業、他

の協力でSONYのシネアルタ初号機F900を使いスーパー16mmにキネコ、同じく16mmフィルムを使いプリントその特性カーブでの私が書いた検証論文を載せています。

フレームレートで言うとテレビカメラの59.94i インターレース、1フレーム2フィールドからフィルムと同じように一齣単位で映像を構築できるプログレッシヴが搭載され、フィルムの24コマという映画と同じ作りで撮影、プリントにも一齣単位で焼き付けできるのです。

ガンマ
単純に指数関数(aのx乗)とlog(対数関数)が理解できれば、我々がデジタルシネマカメラで使っているlogという言葉が少しは理解できるのではと思います。

フィルムログは物理的にハロゲン化銀がどれくらいの光を受けて励起しそのエネルギーにより発色カプラーが集まる…を光の強さとそのエネルギーを対数で表しているだけです。

光のエネルギーは現場の照明、撮影でもわかるように強さを単純には測れません。縦軸に表されている光の量を表すのは難しく、均一の光のエネルギー比率を時間的に倍々でメモリしています。

私たちの使う露出計は光のエネルギーを電気に変えその強さを表示しますが距離が倍になればエネルギーは1/4倍になり、半分になれば4倍になります。

それとよく似た物理的変化がフィルム感光層でも起こります。それをlogで表したのが特性曲線です。縦軸はどこのラボでも同じですが、横軸の表示はまちまちです。基準値をどれにするかで変わってきます。

最近のデジタルログ特性曲線は縦軸は光の量を10bit指数で横軸は真ん中がノーマル0(18%グレーがノーマル)として一メモリで〜-1stops〜0〜1stops〜として表している物が多いと思います。

ここで気をつけなければならないノーマル0の指数ですがメーカーやそのログ特性により変わります。

SDテレビならノーマル0の位置は縦軸では50%で
HD Rec.709なら…簡単に言えないのが、SMPTEがRec.709を策定した時のモニターガンマは1.9相当です。2.2ではほぼsRGBです。
しかし放送関連で現在制作されているマスモニが持っている Rec.709 カラースペースはガンマ2.4がデファクトスタンダードになっているようです。そこで、この値にあわせた新規格が2011年3月に【BT.1886】として策定されました。(HDRではこの値は変わります)

実際この規格はRec.709とは違うのですが便宜上709としています。
この事を色々考えてみました。
HD が出来た時は色深度は8ビットです。
実際には16〜235が表現域です。
HD の場合モニターガンマが変わればノーマル位置も変わるので、ノーマル0が何処なのかは簡単に言えなくなる。

話を最初に戻そう…
人の目のガンマ?ガンマ=1です。
TVの基準もそれと同じ!(初期のSDTVで解説)
何故?上の説明で最近のマスモニは2.4だと言われている!ガンマ=1にするために工夫がほどこされている。

CRTは元から光っている陰極線管、いわゆる蛍光灯のお友達なので黒を作るのに苦労します。
そこで敢えてブラックマスクとコントラストを強くして黒を表現します。ガンマでいうと2.2位です(ただし直線でない)、しかしそのままではコンラストがきつく中間色でも見た目にはならない、そこでカメラの方に0.45というローコントラストガンマ(逆ガンマ)で撮影しハイロー調整の為にニーポイントという途中からコントラストを調整します。
(以上はCRTと撮影用の撮像管で培われた技術)

現状のHD.UHD.2k.4kの撮像素子や液晶などデジタル間では本来なら要らない事なのですが、TVというアナログの世界から抜け出せないTV技術の世界がまだこの技術を継承して、というかさせられています。そう、0〜105%の概念に捉われその基準から物事を考えてしまっている。

悪い例(私の個人的見解)
1950年代、SDTVがモノクロからカラーになった時今までの搬送波にカラー信号を乗せるための凄い技術が開発されました。1/1000のズレを利用、これでモノクロ用に作られた信号にカラーと音の情報を載せる事が出来ました。この時からTVのフレームレートが60iから59.94iになり、タイムコードがドロップとノンドロという二つになったのです。

デジタルになった現在分離はいとも簡単に出来るのにアナログ時の凄い技術まで引きずってしまってる。勿論フレームレートだけでは無く、映像構築も陰極線管から液晶になったのですが必要のないガンマが入り撮影用のカメラにも今は殆ど必要のない逆ガンマが入り…というように、新たな技術のように見えて新たなデジタル技術を昔の技術に変えるという逆説的な事が行われています。特にこの日本のTV業界では…
わざわざ曲線を作らずとも、直線でも簡単に表現できるはずなのに…

デジタルシネマに話は戻します。

テレビとフィルムの融合の時代
1980年代後半になるとコンピュータが発達してきます。それによりデジタルグラフィックスが盛んに創作され1990年代に入るとそれを映画に使う動きが出てきます。
コンピュータ映像はデジタルですが、それを見たり使ったりするには当時はまだテレビ映像システムを利用することとなります。

Cineon(シネオン)は、映画製作のデジタル・インターミディエイトのためにKodakが設計した初のコンピュータシステム(スキャナー、テープドライブ、ワークステーション、デジタル合成ソフトウェア、フィルムレコーダー)
この基本的な考えはまだまだNTSCの時代に10Bit、4kが既に想定され考えられていました。
勿論このコンピューターシステムはその当時スーパーコンピューターご使われ数億〜かかるシステムでした。

また映像記録用に当初のテープドライブにはSONYのD1が使用されテストされ、のちにデジベが採用された。

このシステムは1993年に発表され、1997年までに販売終了。映画芸術科学アカデミーの科学技術賞を受賞。 合成ソフトウェアはもはや販売されていないが、画像を保存するファイルフォーマットは存在し続けており、VFX業界では一般的に利用されている。

映画の合成でCGが使われるようになり、CRTでの表現とフィルムとの表現の整合性が必要となり
テレビガンマとフィルムネガガンマを合わせるためにはシネオンフィルムスキャニング時に特殊なガンマ、シネオンカーブというガンマを作り上げました。合成後にフィルムに戻す事を想定したガンマカーブです。

このシステムでハリウッドのデジタル合成は凄く進みました。しかしその分大変な費用が掛かります。

そしてジョージ・ルーカスの発案となります。
デジタルで撮影、デジタルで合成、デジタルで編集、デジタルで映写、エピソード2、冒頭のテストで使ったSONY シネアルタF900を使った初めての完全デジタルシネマだったのです。

前回の9.でも書きましたが日本のF900とジョージルーカスが使ったF900とは明らかに中のログ設定が違っていました。第10でその中身の設定を今さらながらですが紐解いてみます。それと最近のHDRの必要性?もついでに書いてみたいと思います。

余談ですが…
今あるデジタルシネマカメラのログは殆どがシネオンログを模倣して作られています。

10.最新デジタルシネマ   に続く…