最近、タイトルのブーン系小説を読み終えた。
そもそもブーン系小説とは? という話だが、一時期2ちゃんねるのニュース速報VIP板で流行していた小説形態のうちの一つらしい。
AA(顔文字)を配し、それぞれのキャラのセリフを書いていくようにして会話を表現する形態だ。地の文もある。僕はライトノベルと漫画の中間にあるようなジャンルだと思っている。
このブーン系小説、僕はリアルタイムで遭遇したわけではないが、最近インターネットで見かけ、それまでブーン系小説を読んだことのなかった僕は、試しに、と思って読み始めた。
まずは名作と名高い『( ^ω^)ブーンがアルファベットを武器に戦うようです』からだ。
と意気込んだものの、この作品、実はとても長い。全部で120話ある。区切り区切りで特別編が入るので120話よりも少し多い。実際、僕も2週間ほどかけて読んだ。しかしその長さをものともしないほど、面白い作品だった。
僕が特に面白いと感じたのは、まずその設定だ。
タイトルからして秀逸だと思う。「アルファベットを武器に戦う」って一体何だ。
作品世界では現実の武器よりも遥かに高い威力を持つ武器「アルファベット」が存在しており、それを手に戦うのだ。舞台は三国時代の中国くらいの文明のようだ。まだ火薬もないような時代だ。
アルファベットはAが最弱でZが最強、修行によって高位のアルファベットを扱えるようになる。
その設定だけで、秀逸と言わざるを得ない。思いつきそうで思いつかない。この要素が、作品内でのキャラの成長をわかりやすくしてくれている。
その設定もさることながら、戦闘描写、心理描写も優れていたと思う。僕は三国志等のいわゆる「戦記モノ」には明るくないのだが、戦闘の様子が目に浮かぶようだった。各キャラの武人や軍人としての心理などもよくあらわれていたと感じた。(風景描写はややくどい、ロマンチックにすぎると思ったが、そんなことはどうでもいい。)
以下、僕が特に印象に残っているシーンを挙げる。重大なネタバレが含まれているが、そんなことは気にしない。
・主人公のブーンが戦闘中に相手のアルファベットを奪う形でSの壁を超え、勝利するシーン
・ショボンが裏切りをする(厳密には裏切りではないのだが、なんと言えばいいだろう、正体を表す、だろうか)シーン
・フィレンクトが片腕でありながらもブーンを助けに駆けつけるシーン
・ミルナがWを使い、ショボンに傷を負わせるシーン
こんなところだろうか。
特に、ショボンの裏切りはまったく気づかなかったので衝撃も大きかった。すっかり作者にミスリードされてしまっていた。ジョルジュが怪しくてしかたなかった。
そう、この作品は、このどんでん返しがとてもよくできていたのだ。なにか仕掛けを施していたわけではないのだが、僕は完全にミスリードされてしまっていた。正直、その他の伏線はやや強引なところがあったり、伏線であることが完全に見えてしまっていたり、美しいとはいえないものも多かったが、ショボンの裏切りだけは、とても巧妙に隠され、ミスリードされていたと思う。
僕はこの作品を読んで、ところどころで泣いた。それほど心に響く作品であった。これから他のブーン系小説も読もうと思っているが、最初に読み終えたのがこの作品で良かったと思っている。ぜひ誰かが全編マンガかアニメにしてほしいものだ。僕自身でマンガにしてみたいほどだ。
みなさんももし興味が持てたら読んでみてほしい。と、最大級のネタバレをしたあとで言うことではないが。