あと5年で社長辞める話。 | OWNDAYSの社長のブログ

あと5年で社長辞める話。

僕はよく

「あと5年で社長辞めるよ」

と公言してはばからない。
まあ言い続けてもう18年経つので最近は、あまり真実味もなくなってきたのだけど、なるべく機会があると「あと5年で社長辞めるよ~」と言うように心がけている。

そして、その手の話をするとそれを聞いた人達から

「バイアウトするのが目的ですか?」

とか

「引退したら遊んで暮らすんですか?」

という風に、あまり自分の意図しない事を言われたりする。
周囲の人達には

「あまり不用意な発言をすると色々騒がしくなるので、発言には気をつけろ」

とよく太い釘を刺されるので
ここに一応ちゃんと理由を書いておこうと思う。

企業の経営を預かる身として、一番の責任は何をおいても「従業員の生活の安定」を支えていく事であると考えている。それはすなわち簡単に言えば、どんな事よりも優先して「会社を潰さない」という事を社長は常に考えていなければいけない事だと解釈している。

もっと細かく注文をつけるならば「潰さない」ことは前提で、更に「従業員の給料・生活を守る」という事まで併せて一番に考えなければいけないと思うのである。

ボーナスの有る無しや、賃金の上下、職種の変化、企業が生き続けていく上で、色々な紆余曲折はあったとしても、とにかく会社が潰れずにいることで初めて毎月ちゃんと一定の給与が支払われる。
そして、毎月約束されたお金が自分の口座に振り込まれる事で、そこで働く人達は生活の安定がある程度担保されるのである。

その上ではじめて人は、120%の力で働く事が出来るし、家族も養えるし、あらゆるものを向上させる努力を行う事ができる。

そういうことを考えたときに、今現在のオンデーズの状態はどうだろうか?

多分悲しいかな、僕がいないと、倒産する確率は極端に高まると思う。

いろんな実務面でもそうだし、沢山の契約の連帯保証人にもなってるから、金融機関との取引でも大きな支障をきたすだろうし、何よりも、何か楔が外れたような感じでオンデーズ全体が、バラバラになってしまうような気もする。

「社長がいないと会社が潰れる・・」

こういう状態の企業は恐らく、世の中に沢山あると思う。

いやむしろ、そんな会社がほとんどだろう。

なかには自分がいないと会社が立ち行かない現状を自分の実力と勘違いして「この会社は俺で持ってるんだ!」と自慢げに言う社長もいたりする。

従業員が数人位のベンチャー企業なら、そうならざるをえないだろうし、むしろ社長が全てにおいてトップダウンして、責任を背負って動かなければ、ベンチャー企業なんてものは、まず絶対に成長しない。

同時に、「ベンチャー」と呼ばれる企業で働く社員の人達は、一個人のリソースに頼りきった「極端に不安定な状態の企業で働くという事実」というリスクを背負う代わりに、大企業では得られない急激な成長や、大きなインセンティブを得られるチャンスを持つ。「その可能性に賭けている」という事実もきちんと認識しておかなければいけないとも思う。


話戻って、株式会社オンデーズは現在、国内外で沢山の人達が働いている。正社員の中には既婚者も多くいる。その扶養家族も含めれば、全体で数千人以上の人達が、オンデーズから支給される給料で
生活の基盤を作っている事になる。

この事実だけを見れば、およそ中小企業とは言い難い。とても重たい「責任」を背負ってしまっている。さらにFC店の従業員の方、オンデーズとの取引が売り上げの殆どを占めているような、取引先企業の従業員の方。その家族の方まで含めると更に膨大な人数になる。

この非常に大きな社会的責任を考えた時に、僕一人の存在によって、それら全ての安定が根本から揺らぐ可能性があるというのは、とても大きな「リスク」である。

自分が意図せずとも、仮に明日、僕が交通事故で死んだらどうなるのだろうか?
死なないまでも、大病を患いまともに会話も出来ない状態になり
仕事が全くできなくなったとしたらどうなるのだろうか?

あいつはこの前結婚したって言ってたな・・

あの人はお母さんが入院したって言ってたな・・

自分の置かれた立場と責任を改めて考えると
こんな不安に毎晩頭を悩ませるのである。


「社長を辞める」という言葉の真意は

「自分一人に頼った脆弱な経営基盤を早急に強化する」

という事であって

「5年で辞める」というのは

「5年以内にこの目標を完結させなければいけない」

という事である。
自分が経営者としてエネルギーをなくしてから、後継者を育てようとしたり、集団指導体制に移行しようとする経営者が多いが、それは確実に間違いであると思う。

経営者は自分が社長になった瞬間から、全ての業務と平行して、自分がいなくなったとしても変わらずに会社を存続させる事のできる状態を構築していかなければいけないのだと思う。

「俺と一緒に働こうぜ!俺が突然死んだら、その後は俺の知ったこっちゃないけど」

というのは少し無責任ではないかなと思う。

そんな事をいつも考えてるので「5年」という一つの期限を決め、その間は、全生活、全資産を注ぎ込み全てを賭して経営にあたる。その間に、しっかりと正しい方向へ、オンデーズの舵取りが出来る経営者を育成して、余力を残してバトンタッチして実際の経営を見ながら最後に補完し完成させる。
駄目なら、辞めさせて、再度自分が経営に戻る。そしてまた次の人間を育てる。

もしくは信頼出来るパートナー企業を見つけておいて、万が一経営の安定の根幹が崩れそうな場合は速やかに経営を引き継いでもらえるような可能性を模索しておく。


つまり社長というのは、本当に辞めるか辞めないかは置いといて
辞めても良いようにしとく責任があるという事だ。

そして何よりも一番にやらなければいけないことは、社長という個人の存在ではなく、みんなが心の拠り所や、ブレないで目指す方向を、いつも示してくれるような、北極星のような、オンデーズにおける聖書のような「カルチャーであったり文化」を創造していかなければいけない。


「あと5年で社長やめるよ~」


というう発言の真意は

そんな感じのところにあるのである。