先日、娘の小学校で運動会がありました。
コロナの影響により、例年のようにはやはりいかず、午前中を1.3.5年、2.4.6年の二部に分け、種目もひと学年リレーとダンスの二種目な限定。
参観人数もひと家族2名までの立ち見と大幅に縮小されての開催でしたが、その分子供たちの様子がよく見られるように工夫してくださり、見応えありました。

娘の学年、今運動会1番の見せ場は「よさこい踊り。」
緊張しながらも一生懸命踊る娘の姿に涙腺が…。というのもここに来るまでにこんな物語がありました。

運動会でよさこい音頭を踊るとあって家でも練習に励んでいた娘。

「今度、リーダーを決めるオーディションがあるんだぁ!それに立候補したの!リーダー、頑張らなきゃ!!」

相変わらず謎の自信に満ちている娘。もう受かっている事になっている…。

「………娘さん…、だったらもうちょっと、手の先まで力強く踊った方がいいんじゃないかなぁ…。踊りひとつひとつに意味があるからそれをよく考えて踊ってみた方が見ている人達に、より伝わると思うよ。(大変言い辛いのですが、貴方の踊りはよさこいと言うよりパラパラかと…。)あとずっと悟りの表情(無表情)なので笑顔も大事かと…。」

「…………よさこいっ!よさこいっ!!」

と例の如く私のアドバイスをモスキート音化させ、悟りの表情でパラパラ…よさこいを踊り出す娘。

そしてオーディション当日。

「あー!緊張する!!じゃあ!頑張ってくるね!!」
そう言う娘からは受かる以外の選択肢は感じられない。
「頑張って!!でも、これはオーディションだから、受からない事もあるけど、それは大した事じゃないからね!」
「…?分かってるよ〜。じゃあ、行ってきます!!よさこい!よさこいっ!!」

………絶対、分かってない…。

そして、案の定、帰宅してから終始暗い顔の娘…。これは、あえてスルーした方がいいのか、聞いた方がいいのか…どっちだ…?

「はぁ……。」

大きなため息を吐き、こちらをチラッと見る娘。
……これは聞いた方がいいやつだな…。

「娘…元気ないね?なんかあった?」
「…………オーディション、落ちた……。」
「そっか……。」
「……頑張ったのにぃ……。」

分かる、分かるよ、その気持ち。ママも基本オーディションで仕事を得る身。100回受けられたとしても1回受かればいいくらいの確率なので、ほぼ落ちまくりの私の声優人生22年。
今でこそ「全力でやったオーディションで落ちたのであれば、それはきっと生まれた時から縁がなかったのだ。だからもしこれで受かったとしてもそれは時空を捻じ曲げることになって逆によくない。この先縁のある役がきっと私を待っている!!」などと究極の開き直りが出来る様になったが、新人の頃は「今回は別の方で…。」の連絡を受ける度に「人生、オワタ…」位の絶望感を得てしまい、しばらく立ち直れなかったものだ。
若ければ若い程、その自信を崩される瞬間は耐え難いものだと思うが、その分未来がまだまだある、頑張れ!娘…!と言うことを娘にも届く様に言葉にしたいがうまく言葉が出てこない…。

「オーディションって先生が決めるの?」
「違う…皆んながいいと思う人に手をあげて多い人が受かるの。」

時として残酷な民主主義…。

「そっかぁ……」
「………私には1人しか手が上がらなかった……。」

……なんと…。

「そ、そっかぁ……でも、1人、娘をいいと思う人がいたってことでしょ?凄いじゃない!!」

その言葉に下唇を噛み締める娘。そして…

「……っ………その1人って言うのは……
私なんだぁっ……!!!」

…っ!?

……マジ!?
……今度こそ本当に言葉が出てこない……。
…人生って時に過酷だよな……。

さめざめと泣き出す娘に
「……娘…これだけは間違わないで欲しいんだけど、手を挙げなかった人は別に娘の事嫌いだからとかで上げなかった訳じゃないからね?
ここは人生の厳しいところだけど、娘より踊りがいいなと思う人が他にいたんだよ。
オーディションだからね、受かる人もいれば、落ちる人もいるよ。受かった人はきっと娘よりもっと練習してたかも知れないよね。」 
と必死に諭しにかかる私。
「うん…。でも悔しいぃよぉお…。」
「そうだよね〜、分かるよ、ママもオーディションしょっちゅう落ちるからその気持ち分かるよ〜。でも、その気持ちは落ちた人にしか味わえない大事な気持ちだと思うんだよ。その気持ちはもし娘がただ不貞腐れてしまったらゴミになっちゃう気持ちだけど、どこが悪かったのか、次はもっとこうするぞぉー!って思って頑張れたらそれは本当に宝物になる気持ちなんだよ。ゴミにするか宝にするかは娘が決められるんだよ?」
「……本番までもっと練習したらリーダーになれるかなぁ?」
「……そ、それは分からないけど、リーダーだけが全てじゃないと思うよ。観てる人に感動を与えられたらそれはリーダー以上の仕事してるって事だよ。それは娘に与えられた役割を全力でやるって事だと思うんだよ。それはリーダーじゃなくても出来る事じゃない?」
「………うん………頑張る…。でも…
リーダーになりたかったんだよぉぉお…!!」

あくまでもリーダーになりたかった娘にはまだまだ消化できない気持ちだと思うがそれでも早速踊りの練習を始める娘。

「よさこいっ!よさこいぃっー!

頑張れ…!娘…!!
そんな娘の為にもう一度言いたい。
ママのアドバイスモスキート化を解除して今一度聞いて欲しい。
よさこい踊りがパラパラに見えます。なので若干パリピ感が見て取れるので、もう少し力強く踊ってみたらどうでしょう…?あと、笑顔、大事。

そして本番当日。
必死に笑顔を作ったのであろう娘は緊張のせいか終始、不敵な笑いを浮かべておりましたが、時折パラパラになりつつも最後まで力強く踊っていました。
そんなあなたを私は誇りに思うよ。
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そんな気持ちをその日の夜、伝えたところ
「ありがとう!ママ、観てたの分かったよ!でもママ、ずっとめっちゃめちゃ、じぃーっと観ててちょっと怖かったよ!」

より緊張させたのは私かも知れない…。