私の夫。

普段父幸男や子供達のキャラに埋もれがちだが夫のキャラクターも中々眼を見張るものがある。
例えば彼は中森明菜さんや中島みゆきさんの曲をよく好んで聴いているのだが、この間は朝から中森明菜さんの「難破船」をフルボリュームで聴きながら何故か口ずさんでいる歌は卒業式の定番「旅立ちの歌」だったり、ドライブの時は出身大学の校歌をヘビロテで流したりと中々常軌を逸している。

そんな夫は平安時代に並々ならない憧れを抱いているようで、この間も「ねぇ、これ買っちゃダメかなぁ？」と10万もするガチ目の平安装束をワンクリックしようとしていたので大きめの声を出して止めたりしました。それでも諦めきれない夫はコツコツと密林から何やら取り寄せていたようで、その年の正月、その正体を現した。

黄金に輝く紋付き袴の殿様衣装。

……何故だ……何故平安貴族への憧れが予算を抑えようとした結果、バカ殿へ…？コスプレ感が半端ない。感じ取っていただきたい、⭐️の下に隠された娘のこの上ない絶対零度の眼差しを。しかしそんなんどこ吹く風、正月なら許されると黄金を身に纏ったまま夫は城下町へと繰り出そうとする…。私は浮かれる夫に切々と「保育園のママ、パパ達ともここらの城下町なら会うかもしれない。いや会う。いいですか？殿、私達は正月が終わった後もここに住むのです…。これがどういう事か分かりますね…？」と世話役の婆やの如く、丁寧に説得してその暴走を止めにかかった。

そんな夫は時々よく分からないなぞなぞを出してきたりする。この間も「これは何のモノマネでしょう…！」と両手を上げたまま、リズミカルに屈伸運動を始めた。私はやや食い気味に「分からない。」と即答したが、夫は不服だったようで「ちゃんと考えてよ！これだよ！これ！一度は見たこと…」
「全く分からない。」

更に悔い気味で答える私。
「えー？答えはサザエさんのOPに出てくるタマの動きでした！」

……わからない…
問題もあなたも分からない…

出張に行った時などは何故かひたすら空の写メばかりを送ってきたりする…。取り敢えず返信に困った時は既読スルー。

例1）空…ここどこ？

例2）空…よく晴れてますね。

例3）空…どこ…？

例4）空…雲凄っ…てか、だからここどこ？

例5）そして、空…ってかもはやただ青いだけの画面。

例6）更に空…何故こんな曇り空を…？どういう心理…？

例7）…もう…空はいい…。

後時々出張先で「今このへんにいるよ！」とこんな写メを送ってくるのだが、

……うん…どのへん？

更に「こんなカッコいい電車があったよ！」と送ってくるのは何故か車両の胴体部分。

普通は正面から写さない…？と送ったら「え？そっち？」と正面写メが慌てて送られてきた。

うん、こっち…。

所詮私の様な凡人には到底掴みきれるメッセージではきっとない。

独特な写真への捉え方で言うと、娘の卒園式では、クラスの集合写真を頼むと何故か娘だけをドアップで写してくる。

集合写真とは……。

かと思えば娘の公園で遊んでいる様子の写メを頼めばこんな写メを撮って送ってきたりする…。

ウソだろ……？

お分かりいただけるだろうか…一見、青空と緑の大地がひたすら広がる世界のようだが、真ん中に米粒より小さい娘が写っている…。

そこに大地のスケール感はいらない…娘個人のスケールでいい…。つまり、ここはアップだろう…？

「娘、こんなに元気に遊んでるよ！」と言われて見せられた写メが空と大地だったから、もう、これはとうとう…とマジでビビりました。

とまぁ、未だに掴みきれない夫ですが、結婚して十数年、子供が生まれてからは特に、星の数ほどの喧嘩とすれ違いを経て、今はこれ以上ない頼もしい戦友です。そういえば、ちょうど娘が3ヶ月位の頃、寝不足もピークに達し、色々爆発した私が思わず食べていたコンビニのサラダをTVに投げつけてしまった事があった…。寝不足って怖い。世の特に赤ちゃんを育てている全ての人にあげて欲しい、とにかく出来るだけ睡眠を。

夫だってその時1番仕事が忙しい大変な時だったと今なら理解できるのに、その時はなんだかいっぱいいっぱいでした。そしてそのサラダを片付けながら私は心から反省しました。

「ドレッシング、かける前に投げつけりゃよかった…」と。

…そうじゃない。

因みにドレッシングが原因でTVを買い換える羽目になりました…。衝動の代償は大きかったです…。

子供達が大きくなって巣立っていった暁には夫には思う存分、平安時代生活を楽しんでもらいたいと思います。

大丈夫。何をセットしてきてももう驚きません。車の代わりに牛車買っちゃったとかじゃない限り…。