2011年5月25日に起業してから、もうすぐ10年になります。

 

2011年当時、営業職をしていた僕は、4月の父の死をきっかけに「人は必ず死ぬ。自分の命は本当にやりたいことのために使わなきゃいけない」と考え、仕事を辞め、自分のボードゲームを商品化する夢を形にするため、「ツムラクリエイション」という屋号で起業をしました。

今考えると、あまりに無謀な決断だったと思うのですが、その時はそれしかないと思っていました。起業後は見えない何かに突き動かされるように商品化に向けて必死で動きました。

 

同年11月、自主製作で「Amen」というオリジナルゲームを東京で開催されたゲームマーケットで発売し、以後は色々な場所でイベントに出店したり、ゲーム会を開いたりして、営業・宣伝活動を続けました。

とは言え、現実はそれだけで食べていけるほど甘いものではありません。収入はほとんど無く、貯金を切り崩してしばらく生活していました。収入が無いということは、あなたは社会から必要とされていない、役立たずの人間だと言われているようで、どんどん精神的に追い詰められていきました。社会に対して、お金を生み出していない自分に、引け目を感じるようになりました。何をやっても楽しくなく、心の底から笑えなくなっていきました。

 

「このままではまずい、何かでお金を稼がないと駄目になる・・・」という危機感から、働き先として考えたのがおもちゃ業界でした。おもちゃ業界なら、自分の得意なボードゲームの知識も生かせるし、興味関心もあるし、向いてるんじゃないか、と。

そこから就職活動を始めたのですが、希望の会社には書類審査の時点で不採用、面接さえしてもらえませんでした。

そこで、他の就職先も探しつつ、「資格があったら有利になるのではないか」と「おもちゃインストラクター」「おもちゃコンサルタント」(芸術と遊び創造協会)の資格取得の勉強を始めました。(それぞれ2013年に取得)

 

そんな中、ヨーロッパの木製玩具を扱う店「つみきや」と出会って、様々なタイミングが偶然に重なって、2013年9月から勤務させてもらうことになりました。「好きなことで人の役に立つこと」「労働してお金を得ること」の喜びをこの時改めて実感しました。つみきやには本当に救ってもらったと感謝しています。

 

働いてお金を稼ぐことで、社会に対する引け目も無くなり、精神的に安定するようになりました。基盤が出来たというのか、これがあるからツムラクリエイションの活動を好きにやれる、という感覚でした。

 

そこからおもちゃ屋スタッフとボードゲームクリエイターという二足のわらじを履いて活動を続け、今に至ります。

 

10年を振り返ってみて、あの時、無謀だったとしても、思い切って踏み出して良かったなと思っています。踏み出していなければ、出会えなかった人や景色が山ほどあります。今の自分があるのも、あの時の決断があったからこそ。10年前の自分に「よくやった」と言ってやりたいです。

そして、この10年。僕の活動を温かく見守って応援してくれた方には感謝です。ありがとうございます。

 

現在はコロナ禍でなかなか以前のように表立ったゲーム会やイベントなどは出来ていませんが、「福岡県大すごろく」を始め、制作の方に重きを置いて活動を続けています。

 

これからも、ツムラクリエイションの理念『「オモシロイ」を、もっとつくる。』をモットーに、人に喜んでもらえることをずっと続けていきたいと思っています。

 

どうぞよろしくお願いします。

 

2021年5月23日

津村修二