一か月ほど前のことです。
地元で上映される「ある映画」に母は誘われました。
「どうしても観に行きたい!」
そう言って、張り切って予定を立てていましたが、残念ながら行くことができませんでした。そんな母の願いを叶えるべく、少し早い「母の日の贈り物」としてそのDVDをプレゼントしました。
『海洋天堂:Ocean Heaven』
とても喜んでくれて、すぐに観ていた母。
私が観る前に、あらすじを事細かに語ってくれました。
その感動のストーリーは、母が「自閉症」という障がいに永年関わったことがあるからこそ、他の誰よりも深く胸を打つものだったようです。
つい先ほど、私も独りで観ました。
きっと泣いてしまうだろうと思って、家族が居なくなってから観たのです。
ストーリーは、自閉症児とその家族が直面する厳しい現実…にも関わらず…なぜか、ささやかな幸せと微笑ましい親子の日常生活が胸に沁みてきます。
余命わずかと知った父が、残された日々を障がいを持つ息子のために何ができるのか?
一生懸命すぎる「父の愛」に、私は涙を抑えることができませんでした。
親の子に対する「愛の深さ」を知りました。
子どもが20才にもなれば、普通であれば、親はそこで子どもから解放されます。あとは子どもが自立して、自分の人生を進んでいくだけ。親はそれをそっと見守り続けるだけ。
でも…
障がいを持つ親は、決して子どもから離れられることなどできません!
一生、命のある限り、支え、励まし、育て、傍にいてやらなければなりません。
いや、そうしなければならないというより、ただ「命を懸けて守ってやりたい!」と純粋に心からそう想うのでしょう。
「この子がどうかいつまでも幸せに暮らせますように」と願いながら傍にいてくれるのです。
私が「難病」だと知らされた時のことです。
今から12年ほど前のこと。母は、
「一生、私があなたを守る!命を懸けて守るから!」
そう強く言い切りました。
細いチューブを使って栄養摂取しなければいけなくなった日。
絶食生活が開始されたその日。
私は自らの手で鼻から胃にチューブを通すことができなくて、ひとり殻に閉じこもってしまいました。
「これから一生、こんなチューブで生活していかなければいけないなら死ぬ!」
そう決めました。
覚悟しました。
そうして外へ飛び出したものの…
実はそんな強さもなくて、帰るところがなくて帰ってました。
その時、私の目に衝撃的な光景が飛び込んできました。
母が自分の手で鼻から胃にチューブを挿入しようとしていたのです。
「私は死ねない!死んではいけない!」
そう思いました。
それから四年間、私はチューブにつながれた生活を送りました。
そんな生活が続けられた理由、それは、母が献身の愛で支え続けてくれたからです。
ただ支えるだけではなく、何年も先を見通し、私が独りで生きられるように、傍で励まし続け、たくさんのことを教え続けてくれました。
「身体が動かなければ、『頭』で勝負しなさい!」
「英語が好きなら、とことん勉強しなさい!」
「本が好きなら、とことん読みなさい!」
「書きたいものがあるなら、とことん書いてみなさい!」
とにかく、どんな状況でも、「できることがある」ことを教えてくれて、その「できることに夢中になってやってみること」を応援し続けてくれました。
そのおかげで今の私がいます。
母は、ごく普通の人です。
でも、強い人。
私のためなら命を懸けられる人。
きっと、どの親も同じ。
あなたの親も同じ!
あなたのためなら命を懸けられる人たち。
どうか平凡でも偉大な父と母の存在を忘れないでください。
大切に想ってください。
この映画を観て、また再び母の偉大さを知りました。
あなたとあなたの大切な家族が…
みんな笑顔でいられる良き一日になりますように。
そう心から願っています。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。