晴れ「別海から来た女」佐野眞一著より。富士山

(前日のつづき)
この事件の被告、木嶋佳苗はネットではかなり饒舌だったようだ。そして、メールでは言葉巧みに独身で結婚願望のある中年男性にウソを重ねて、金銭を要求している。見知らぬ他人とメールをはじめて、間もなくお金の話が出てくること自体も怪しい。

筆者はメールという整ったフォントは、公共性をまとっているという表現をしている。それが危険をカモフラージュする“信頼性”という罠になっているようだ。

佐野氏はこうも言う。「結婚詐欺は数年前まで男の“専売特許”だった」と。しかし、この事件では立場はまったく逆転していた。女は自分の華美な生活を維持しようと詐欺を繰り返していたのだ。

そして行き詰るとすぐに殺人にまで発展してしまう。実に恐ろしい。その方法は睡眠薬で眠らせ、その間に練炭による一酸化酸素中毒で死亡させるというものだった。実にアナログ的ともいえる。

事件の被告は当然ながら異常者ではあるが、毒婦ということばも当てはまる。佐野氏は「(被害者となった)彼らにもう少し人間を見る洞察力があれば、最悪の結果だけは免れた気もする」と述べていた。

ネットでは誰でもが思いつきでいきなり発信者となることができる。そこでは何が真実で何がウソかはわかりにくくなっている。また人は誰かとつながりたいという本能もあるのだろうが、気をつけねば・・・な。