雨曇「朝日新聞」2010.2.21付けより。退屈バスグッド

“仕事力”というインタビュー記事のなかで、新井満さんが語っていたことだった。4回連載のうちの3回目だったが、それまでの2回は実に深刻な顔写真が掲載されていた。むしろ恐い印象を与えていた。しかし、今回満面の笑みを浮かべている写真を見てなんだかほっとした気もした。

これは新井さんの基本的な生き方、考え方を表したものだろう。一般的な比喩で「バスに乗り遅れるな」ということは、人と同じよう生きることを意味していた。むしろ人とは違った生き方をするからこそ、オリジナルなことで成功できると思っていたようだ。

実際、そうすることで成功を実感したからこそ言えることなのだろう。たとえ人と同じようにして、うまくいったとしても満足感はイマイチということだ。できれば、自分らしいやり方でうまくいったほうが喜びも大きいことだろう。

そのためには人のやらないことにいつも着眼するということがまず必要だ。しかもそれを貫き通すには、“オリジナルへの勇気”というものがなければならなかった。むしろ、人と同じ発想で生きていく方がた易い。オリジナルへの勇気とは、人のやらないことへのチャレンジとも受け取れる。

新井さんは、30年ほど前に会社の仲間と「環境映像」という商品を作ったものの、当初はまったく売れなかったという。しかし、30年後の今ではすっかり私たちの暮らしの中に溶け込んできていることを実感している。

ウケるかどうかは、その時代にも左右されることが多いのだろう。何が正解で何が不正解かは即判断できないことが多い。それでもなおかつ、自分独自の視点を持つことは意味があるのだろうな。