200本の手が一斉に上がった。

恥ずかしいそうに手をあげた小学校3年生の女子生徒に、高座に上ってもらった。

ラーメンを食べる仕草をしてもうつもりで、扇子と手拭いを渡すと、彼女は私に小さい声で

「死んだ私の犬に会いたい」と言った。

落語紹介の初めに、落語は想像でどこにでも行けるし、誰にでも会えるんだよ。

私はロックダウン中、ハワイにも、日本にも行ったよ。と言った。

きっとそれで、亡くなった犬に会える!と思ったのだろう。

 

「犬の名前は?」

「ミカ。レバノンで死んだの。悲しいの。すごく会いたいの。」

思わず、私は泣きそうになったが、いやいやこれは学校公演、高座で私が泣いてる場合ではない。

グッとこらえて、

「じゃあ、ミカの髪を切ってあげよう!」

扇子をハサミにして、ミカを見台に置いて、頭と体を撫でるしぐさをしてもらった。

「ミカの、髪は柔らかいの?硬いの?」

彼女は、笑顔で「柔らかい!」と言って、扇子で切り始めた。

「あ、まだここ長い毛残ってるで!あ、くすぐったい!」とミカをしゃべらせて笑いもれて。。。ミカの髪を切っているキラキラとした彼女の瞳が忘れられない。

 

メルボルン には沢山の移民がいる。今日の学校も、イタリア、ギリシャ、レバノン、インド、中国、日本、アフリカなど、数年前に公演させていただいた時よりも人数が増え、多民族になっていた。

 

プレップから6年生まで、700名以上の生徒さんを学年ごと分けて、50分の3回公演。

落語と腹話術のショーとワークショップを、年齢に合わせて内容を変えてやった。

 

忍者けんちゃんは、いつも通り大爆笑で、笑いと叫び声で窓ガラスが割れるかと思った。

落語は、仕草や小噺をやりたい人?と聞くと、ほとんどの生徒が元気に手をあげてくれた。

時間の都合で数人しか上がってもらえなかったが、幽霊登場シーンが一番人気であった。

鳴り物クイズでも、雨音を「雨漏りの音!」波音を「雷の音」幽霊登場のハメモノでは「お母さん登場シーン」などと笑わせてくれた。

なんて頭のいい子達なんだろう、3年生以上から落語を入れたが、ちゃんと理解して笑ってくれた。

 

学校を去るときに、その日の出来が如実に現れる。

今日は、最高だった!

休み時間で遊んでいた生徒たちが、定学年はいつもなら女子が抱きついてくるのに、今日は男子まで抱きついてくれた!「すごく、おもしろかっよ~!」「また来て~!」「どうやって人形がしゃべるの?」「けんちゃんどこ?」などなど、たくさんのこたちが、興奮して一斉にしゃべるので、なんて言っているか聞こえないほどであった。低学年の子に「RAKUGO面白かったよ!」と言ってもらったのには感激した。

白人の高学年男子の大人びたしっかりとしたコメントには、笑った。「とても素晴らしいエンターテイメントで、あなたの才能、技術に感動しました。たくさん笑わせて頂きありがとうございました。」(日本語に訳すとこんな感じ)と深々とお辞儀してくれた。

 

先生からは、「SHOWKOのパフォーマンスは、プレっプから6年生まで年齢に応じて適合していて、生徒達はSHOWKOの落語と人形遣いの素晴らしい技術に虜となり、集中して積極的に参加していた。」と言うありがたいコメントを頂いた。

 

今日は、700人の小さなエンジェル達に出会い、笑顔と笑い声で、私はバッテリーフルチャージ!まだ、胸が熱い。ありがとう!これから大人になっても幸せな人生を送ってね!今日会ったみんなが一人残らず幸せになりますように!