「こうして!ここをこう変えて!」「はい!あなたの言うことならなんでも聞きます!」

これは、どこで誰と誰が会話していると思いますか?

 

答え:ジムの生徒さんとインストラクターとの会話。ちなみに、前者がインストラクターのようですが、生徒さんの言葉で、後者がインストラクターです。

 

日本では、コロナウィルス感染予防のため、スポーツジムが閉鎖されているところもあるようだが、メルボルンでは逆に、免疫力を高める為スポーツジム会員が増えているのではないかと思われる。今日も新しいメンバーが入ってきた。

 

私は、昔からジョギングに水泳など運動が好きでほぼ毎日やってきたが、2年前からは本格的に鍛え始め、ジムで筋トレやサーキットをするようになった。

体力がつくだけでなく、病気ひとつしたこともなく、気分の浮き沈みもほとんどなくなり、運動の後はやる気と強気が湧いてくる。そうそう、二日酔いをしなくなった。

公演があるときでも、海外でも、忙しいときでも、必ず毎日運動している。

今はまっているのが、”88ALTITUDE” といって、海抜3200〜3500メートルの状態、つまり空気が普通より30%薄い中で、サーキットを45分間する、大変厳しいトレーニングだ。

このクラスに入っている人は皆、自分の限界に挑戦したい人、新しいことに挑戦したい人、効率よく運動したい人ばかりだ。

だいたい、20代〜60代の男性50%女性50%の割合だ。

10〜15種類程のマシーンや道具を使った運動を40秒しては、10秒休み、ぐるぐると回る。時間の長さや、運動の内容はインストラクターによって違う。

 

大概、このようなサーキット式のトレーニングでは、モチベーションを上げるためにインストラクターが、軍隊のように「もっと早く!」「やればできる!」「カモン!もっとプッシュしろ!」と叫ぶ。「こんなだらしないようでは、俺のハイファイブはあげられないぜ!欲しければもっと早くやれ!」とまで言うすごいSなインストラクターもいるが、彼が一番人気である。

 

私のクラスの女性生徒は、皆すごくスタイル抜群で美人でしかも、女医、大学女教授、女女弁護士、女優と、かっこいい職業の人たちばかりだ。男性とはあまり喋ったことがないので何をしている人かは知らないが、女性群はとにかく強い!

 

私たちのクラスの新しいインストラクターは、優しすぎて、ちょっと自信がなさそうで、音楽に合わせて手拍子をするが、全くリズムとあっていない。

モチベーションを上げるための声がけも、「よくできました〜。よくできました〜。」とか弱い声。思わず、笑ってしまいそうになる。

 

だが、他の女性群は違う。インストラクターのメニューや、時間が気に入らなければ、すぐに「これはこうでこうだから、こうした方がいいと思うわ!変えてちょうだい!」もしくは、メニューが物足りなければ、インストラクターが運動が終わってストレッチに入っていても、自分たちだけで自分たちで考えた運動を続ける。女性群が「ちょっと、今の休憩は長すぎて心拍数が普通に戻ってしまい、意味がないわ!」とインストラクターに発言しているのを見て、彼女たちが、タイムボカーンのドロジョ女様に見えた。ムチで打たれるインストラクターは「はい!女王様、あなたの言うことならなんでも聞きます!何なりとお申し付けください!」とひざまづいているように勝手に想像しておかしくなった。そんな時すかさず彼女に「あなたもそう思うでしょう。」とふられ、思わず「YES! I agree,with you!」と答えた。彼女たちは彼をいじめているのではなく、陰口を言うのではなく、面と向かって抗議しているし、リクエストしている内容は全く持って正しいので、清々しい!逆に男性群は黙っているが、後で上のマネージャーに苦情を言うのでそちらの方が怖い。

 

前任があまりにも完璧だったので、新しいインストラクターのプレッシャーは凄かっただろう。なにせ、元ラスベガスのトップダンサーで、ジムの知識も豊富、人当たりも最高、

エンターテイナーだけに皆の心をつかむ技を得ていて、しかも男前!彼の作るメニューは大変厳しかったがとても理にかなっていて、誰も文句を言わなかった。いつもノーメイクだが彼のときにはわざわざ化粧をしてきていた女性もいた。男女共から人気だった。

 

新しいインストラクターがかわいそうに思えてきたが、そんな気の弱いインストラクターも彼女たちに鍛え上げられ、なかなか厳しいメニューに変わってきた。性格は変わらないので相変わらず、優しい声で「よくできました〜」

 

適材適所とはよく言ったもので、彼は、シニア向けのトレーニングのインストラクターになった。お年寄りの人たちから人気者で、皆を優しく励ましながらトレーニングしていく彼の姿を遠くから見て、何だか嬉しくなった。

 

お笑いにも、適材適所があると思う。

特に海外では。そう分かってから、随分と楽しく思いっきり自分を表現できるようになった。

 

さあ、明日も仕事の前に、女王様たちと激しいトレーニングに励むぞ!

感染には気をつけながら。。。