ひと目惚れ、ってのは誰でも一度は経験する。
そのときのボクがそうだった。
彼女の眸(め)には少女漫画のようなお星さまがキラキラ輝いていて、ボクの心臓はドッキーンと噴火した。
溢れ出る溶岩に焼き尽くされて、ぴくりとも動けなくなったのだ。
そんなボクを見るともなく見ていた彼女は、次の駅で降りながら何か囁いた。
しかし彼女の言葉には羽根が生え、天使のように飛び回ったので何と言ったのか分からなかった。
ボクは捕虫網で言葉たちを捉え、家に帰ってノートに貼り付けた。
これで読める。
ば・っ・か・み・た・い~
ああ・・・女心は分からん。
そんなわけでボクは96回目の失恋をしたのだった。
泪が96粒こぼれた。
プロト・パンク・バンドとしてあまりにも有名になりすぎたクエスチョンマーク・アンド・ザ・ミステリアンズの「96粒の涙」は、日本でも大ヒットしたのだ。
「ガレージ」なる言葉を知った80年前後、もう少し違う意味に捉えていたので、全米ナンバー1ヒットに輝いた彼らがガレージコンピに収録されていたので驚いた記憶がある。
今年も枇杷の実が色づくころになった。
この季節は、枇杷泥棒の野生リスとの間で「仁義なき戦い」が毎日上映される。
深作欣二監督の傑作映画だ。
ちょっと色づいただけでまだ食べられないのにひと口かじってはポイ捨て。別の実をかじってはポイ捨て。
ちゃんと食べてくれるんなら我慢もしよう。
食べ物を粗末に扱うリスの行為は許せないのだ。
ヤクザの風上にもおけない。
そこに今年はハクビシンが加わった。
三つ巴の戦いとなり、シリーズ最高傑作の前評判も高い。
皮だけ残して中身がないのはハクビシンが食べた枇杷。
中身が残っているのはリスの仕業。