曇天の日は気が重い。
晴天の日は木が乾燥する。
紀文が高揚するとはんぺんを食いたくなる。
エビ天にすると天婦羅だ。
イカ天なら「たま」だ。
暗く垂れこめた曇り空を撮ろうと海へ出かけた。
垂れ下がった雲の尾が海に触れ、雨のしずくとなって滴り落ちる、そんな瞬間を撮りたかったのだ。
時を忘れてシャッターを押し続けていたら、雨足が音を立てて近づいて来る。
慌てて民家の軒先に避難して雨宿りすると、するすると戸障子が開き、「どうぞ中でお待ちあそばせ。濡れますわ」と妙齢のご婦人がボクを手招きしてくれる。
神々しいまでに美しい女人に誘われて、断るのは野暮天だ。
気もそぞろにお礼を言って中に入ると、「どうぞ、お上がりなって」と、天にも昇らんばかりの有難いお言葉。
「雨が上がるまで、ささ~ま、どうぞ~」と酒(ささ)をお酌してくれる。
美しい女人を相手に飲む酒は旨い。
1本が2本、2本が3本・・・となって10本も飲んだろうか。
雨はまだ止みそうにない。
ふと漏らした一言が命取りになった。
「雨がやまねえと帰け)えれねえなあ・・」
「まあなんてつれないお言葉。あたしを残してお帰りになるだなんて。あなた様をひと目見た時からこんなにお慕い申し上げているのに」
よよよ~と泣き崩れ、たもとで隠すあだ涙。
感極まったボクは「いやさ、どこへも行くものか。お前(めえ)さんと夫婦(めをと)になって、天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝になりましょうぞ」と彼女をひしと抱きしめようとしたそのときだ。
がらがらがらがら~と轟音がして雷が落ち、戸が開いた。
「かあちゃん、今夜の肴を手に入れてくれたか」と雷様が立っていた。
「あんた。ご馳走だよ。採れたての臍だからね」
天女とばかり思っていた彼女の振り向いた顔。
眼には瞋恚(しんい)の炎(ほむら)を燃やしてボクの臍を焼き、口は耳元まで裂けた羅刹女の姿だったのだ。
恐怖にかられたボクは思わず知らずお腹を撫でた。
へ~、そう~、なんて言うなよ(笑)
たまには有名どころを聴きましょう。
ジョン・レノンがキース・リチャード、エリック・クラプトン、ミッチ・ミッチェルを従えて演った Ya Blues です。