坂口安吾「二流の人」初版本 | 洋楽と脳の不思議ワールド

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秀吉の参謀、黒田如水こと黒田勘兵衛を描いた中篇小説。
執筆は戦時中だが、発売されたのは戦後の昭和22年(1947年)1月30日。
四六版並製で、本文99ページ、略フランス装、九州書房刊、定価13円。
九州書房は福岡県福岡市が住所。
現在のように、出版文化は東京一極ではなかったということなのか、疎開していたということなのか?
戦後すぐの紙不足の時代で、おまけに地方の出版社なので用紙を手に入れづらかったためか、ひどいザラ紙。昭和21年に発行された(戦争が終ったのは昭和20年)織田作の「それでも私は行く」も近いうちに取り上げるが、この本の用紙もザラ紙。しかし、ここまでまで粗悪な用紙ではない。
出版された経緯を調べようと思って全集の年譜を探したのだけど、箱のみで、中身が行方不明だったので、今は分からない。ご勘弁下さい。
自分の才能に満々たる自信を持ちながら、秀吉という天才の前では色あせたものに見え、しかもその秀吉から正当な評価を受けていないという憤懣をもつ勘兵衛の苦悩と行動を描いた作品。
小田原陣でもう1人の巨人、徳川家康に会うところから小説は始まり、朝鮮役を経て秀吉が死に、あわよくば天下を狙おうと動き回りながら1日で関が原が終り、夢が潰えるところで小説は終る。
様々、示唆に富んだ人間観察にう~んとうなること請け合いです。