珍品レコ―ド・・・中原中也の世界 | 洋楽と脳の不思議ワールド

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珍しいレコードを取り上げる。
中原中也といえば、多感な10代の頃、誰でも一度はのめりこんだ経験があると思う。
年をとって感性が摩滅したのでもう丸っきり興味をなくしたが、角川版の中也全集を買い揃えるほど熱中した時期だってあるのだ。
そのころはボクだってまだ紅顔の美少年だったんだゾ~!(顔が見えないブログって、「美少年」って書けるからいいですね・・笑)。
このレコードは、74年に中央公論社が作った文芸レコード。
中也の詩につけられた曲と、詩人による朗読からなっている。
監修と編集は大岡昇平氏と吉田秀和氏。
大岡氏と言えば、中也を世間に広めた張本人。
吉田氏は音楽面から抜擢されたのだと思うが、中学時代に中也と面識があったそうだ。
中也に連れられて青山三郎のもとを尋ねた思い出が記されている。
作曲の方は諸井三郎(「朝の歌」、昭和3年の作曲と書いている)、内海誓一郎(「帰郷」昭和5年作曲と書いている)の当時の大家のほか、清水脩(「北の海」)、青英権(「含羞」)、石渡日出夫(「汚れちまった悲しみに・・」)があり(クラシックには無知なのでこの人たちは知りませんが、今日では大家なんでしょうねえ)、なんと大岡昇平氏が作曲した作品が2点(「雪の宵」「夕照」)あるのだ。
曲はどれも歌曲形式なので、中村義春が4曲、瀬山詠子が2曲独唱している(有名な人なんだろうけど、恥かしながら知らないのです)。
曲と曲の合間は朗読でつなぎ、この朗読者がまた凄すぎる人たち。
「サーカス」「正午」「冬の長門峡」の3作品が草野心平氏、「臨終」「夏」「妹よ」「みちこ」「六月の雨」の5作品が谷川俊太郎氏、「少年時」「一つのメルヘン」「月の光 その一」「月の光 その二」「骨」の5作品が山口泉氏の朗読となっている。
草野心平氏といえば、新宿に彼が関わっていたという飲み屋があり、何度か出入りした経験があるのだけど、もうとっくの昔に消えたんでしょうねえ。
「サーカス」の朗読は、中也が朗読していたように朗読したと書いている。
出版社の制作らしく、厚手の表紙に16ページのブックレットが付いていて、各人のエッセーのほか、収録詩が掲載されている。
だから何しろ重いのだ。750グラムもある。
珍品ではあるけれど、この手を喜ぶ文学青年も絶滅したはずなので、もう市場では取引されないレコードなんだろうと思う。
量り売りしたら売れるかなあ・・

ところで中也の詩に曲をつけた人として思い浮かぶのは友川かずきという人。
78年にベルウッドレコードから全曲中也の詩からなる「俺の裡で鳴り止まない詩」というアルバムをだしている。
フォーク系の人だったのでレコードは買わなかったが、知人からもらったテープを愛聴していた。
「茶色い戦争」と「サーカス」が特に好きだったんだけど、Uチューブを調べたら、大好きだった「サーカス」があったので、下記よりどうぞ。


尊敬する詩人の詩に曲をつけるのは、やはりフランスが本場で、レオ・フェレにボードレールの「悪の華」というアルバムがある。ランボーの「地獄の季節」もアルバムにしていた。が、ボクにとってはこの人は、パリの5月革命にシンパシィを感じて作ったオリジナルの「アムール・アナルシー」(アナ―キーな恋)が1番。