ALiC日進を見に行ってきた(後編) | たまに昭和散歩

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某ブログで公開していた記録を保管している場所です。
昭和の頃を感じられるいろいろな場所を、たまに調べています。

かつて神奈川を中心に7店舗を展開していた家電・ホビーのチェーン店「ALiC日進」。その後編です。


●大船店

ALiC日進は「家電とホビーの専門店」のキャッチフレーズで知られていましたが、
全体的には家電販売が大半を占めていて、ホビーについては一部店舗のみの取り扱いだったそう。
横浜駅西口本店は地下フロアの全てをホビー専門売場に充てるなど力を入れていましたが、
ほかには川崎駅店のみに設置されていたと言い、店舗限定の展開でした。

営業不振のため、21世紀に入って店舗を削減。
本店の横浜駅西口店が撤退した後、川崎駅のお店も閉店。
その後は大船店が実質的な本店となり、ホビー部門もここに移ってきました。
昭和から平成にかけての懐かしいチェーンと思われているALiC日進ですが、
大船店については比較的長く残って、閉店したのは2012年。7年前まで営業していたのです。

そんな大船店の跡地に行けば、まだ何か名残があるでしょうか。

大船駅は交通の要衝です。
JR東海道線と横須賀線の分岐駅、根岸線の終着駅。そして湘南モノレールの始発駅。
周辺各住宅地へ向かうバス路線も多数発着、バスターミナルもあります。

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鉄道利用者が多いわりに駅周辺の再開発は遅れていて、道路整備は停滞しています。
とにかく車が通行できる道が限られ、主要道も道幅が狭い。
どこかゴチャゴチャした印象で前時代的な雰囲気が色濃く残っています。
駅からちょっと入ると昔の市場そのもののような光景で、路地の両脇にはぎっちりと商店が並ぶ。
車道であるはずの道にまで商店の品物が溢れ、市場の構内道路と化しています。
これが大船という街の良さでもあり、反対にウイークポイントでもあるのですが。

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それでも大船の個人商店は廃れる傾向にあるのでしょうか。
先程の市場のような区画を抜けると、ちょっと閑散とした街並みに飛び出ます。
そこには首都圏郊外の駅周辺のどこにでも見られるような、コイン駐車場が多数点在。
ここにも以前はお店があったんだと思うのですが…やはり不景気はこの街にも波及しているのか。

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大手のブランドを冠したコイン駐車場は、だいたい昼間1時間400円というのが相場。
首都圏郊外の駅近くとしては一般的な設定ではないかと思います。

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ここは大手ではないせいか、少し安い。1時間300円。

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そんな中、ひときわ広い敷地の駐車場がありました。
あの狭い面積に詰め込まれた市場のような区画のすぐ横に、こんな広大な空き地がある。
再開発の前触れという訳でもなさそうなんですが、ちょっと不思議に思えます。

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この広い駐車場、料金がとても安い。1時間200円と、首都圏の駅近くとしては破格。
そしてなんという偶然か、名前がまたありがたい。「日進駐車場」。
ALiC日進を探しに行く途中に、日進駐車場。なんだか縁起がいいような気分がするじゃないですか。

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料金設定が安いためか、周囲の駐車場はガラガラなのにここだけは稼働率が高めです。
なにせ30分単位で100円から。近隣の買い物やちょっとした用事に重宝するようです。
すっと入ってきて用事を済ませ、比較的短時間で出場する利用者が多いように見えました。

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「日進第1駐車場」と書かれていますが、ということは近くに第2もあるということでしょうか。

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それにしてもこのパーキング、掲示の類いが独特です。
普通のコイン駐車場はもっとロゴマークを主張しながらも、記載の類いはごくごくシンプルです。
ここ日進駐車場というところに関してはそのような一般的な概念から外れている気がします。
個人経営だからかもしれませんが、駐車場の掲示というよりは一昔前の店舗のPOPという感じ。

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そして、お願いとか注意文の内容がかなり細かい。
大手と違いあらゆる問題に手が回らないことも理由かとは思うんですが、
なんとなく気難しい経営者なんじゃないのかとか、余計な推測までしてしまいます。

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同じ区画の裏手に、そっくりな雰囲気の駐車場がありました。

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予感的中、日進第2駐車場という名がありました。料金は第1と同じで、やはり安い。

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偶然見つけた日進という名の駐車場ばかり見ていないで、早く肝心なALiC日進のほうへ…
そう指摘されそうなんですが、いえいえこれも大切な現地取材なのです。
なぜなら、たまたま通りがかりで見つけた同名の駐車場という訳ではなくて、
この駐車場自体がALiC日進と大いに関係があるものだからです。

入口付近の掲示を見れば、わかります。一見先程の第1と同じようなのですが…

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なんとこちらには「ALiC日進第2駐車場」とある。
そう、この駐車場はかつてのALiC日進大船店の直営です。

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日進第1駐車場・ALiC日進第2駐車場のすぐ隣、狭い私道を挟んだ場所に、
つい7年ほど前までALiC日進大船店が営業していました。
その場所には、今も建物が取り壊されることなく現存しています。

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あの懐かしいマークと店名ロゴも、そのままです。
横浜駅西口本店で何度も眺めたこのマーク、20年ぶりくらいで再会した気がします。

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店舗跡の建物も駐車場の土地も、ALiC日進の所有不動産だったようです。
営業不振で横浜駅西口本店から撤収後も、ここに拠点を移して頑張っていたのでしょう。
ALiC日進という店舗経営は頓挫したものの、法人としてはまだ生き残っている模様です。
かつての横浜駅西口本店は今ではドン・キホーテ、あの1等地ですから家賃収入は相当のはず。
大船店跡地は、現在時間貸し駐車場という形に姿を変えたものの、同じ経営母体が経営しています。
ALiC日進は経営破綻したのではなく、自主的な経営縮小・閉店という方向で消えていったケースです。
その辺りは過去取り上げた磯村建設・新栄電機とは全く違う方向性の撤退と言えそうです。

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駐車場オーナーと思われる男性が車でやってきて、店舗跡のシャッターを開けました。
現在は駐車場の管理室という名目で利用しているようですが、管理業務はほとんどないはずです。
横浜西口や鶴見西口の「ALiC日進ビル」のオーナーでもあるかもしれませんから、
そういう業務で事務所の体は維持する必要があるとか、そんな理由なのでしょうか。
※経営母体の「株式会社日進」の本社所在地は現在も旧横浜駅西口店の住所のまま、
 ドン・キホーテ横浜西口店に代わった現在も事務所だけ現存している可能性があります。
余談ですが、オーナーさんの車はレクサスでした。少なくとも現在の経営は成り立っているようです。

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「日進第1駐車場」の駐車券。掲示にはありませんでしたが、ここにはちゃんと
「ALiC日進」のロゴが入っています。今でも一般人が容易に触れられる、貴重なALiC日進。
駐車券という性格上、残念ですが持ち帰ることができません。写真に残すだけになります
(出庫時に領収書を発行できますが、こちらは「日進第1駐車場」の印字だけでロゴはありません)。

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かつて横浜や川崎という主要駅で、家電とホビーの大型店舗を構えていたALiC日進。
末期にそれら要素を集結させたここ大船店ですが、もうその賑わいを見ることはありません。
つい7年前まではこの建物の中に家電売り場や模型売場が詰め込まれて、
それらを求めてお客さんがやってきた…などという様子は、もはや想像することすら難しい。
そう、既に7年も経っているのです。建物だけでも残っているのが奇跡的というべきか。

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駐車場経営だけであれば、敷地内に小さな小屋を建てれば足りる気もします。
あえて店舗跡の建物を残しているのには、やはりそれなりの理由があるんでしょう。
去年までは看板類や掲示類が多く残っていたようですが、残念ながら撤去済み。
それでも今のこの姿についてはまだ当分残るのかもしれません。

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大船に行けば、今もALiC日進の名残に触れることができます。


●生麦店

テレビCMの頃にもちゃんと「生麦店」と出ていたし、昔から存在したはずなんです。
しかし生麦というのは急行すら通過する小さな駅、駅前も僅かな商業地があるだけ。
大ターミナル駅に堂々と自社物件を構える大型家電店が出店する立地でもないし、
なんだか異色な存在だなとは思っていたのです。

実際、ALiC日進生麦店は特殊な店舗だったようです。
駅利用者が多く立ち寄るわけでもなく、かといって車で来店する客がターゲットでもない。
それじゃなんなんだと言われれば、前時代的なスタイルの電気店だと言うしかないのです。
ここ生麦店は、我々が知っているALiC日進とは異なるお店です。当時も、そして今も。

ALiC日進生麦店は、国道沿いに建てられました。
都内から横浜まで海沿いを通る幹線道路、国道15号。「第一京浜」とも呼ばれます。
物流を担う重要道路で、とにかく大型車の往来が激しい。
家電とホビーの専門店が出店する場所としては、似つかわしくないイメージしかありません。

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生麦店の住所の辺りを歩いてみると…国道沿いの歩道の先に、見覚えのある看板を付けた建物が。

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テレビCMで見かけた巨大な店舗とは正反対の小型店舗、そして外装もとても地味。
これがALiC日進の建物だったとは、にわか信じられないというのが正直なところ。
しかし、現実としてこうして残っているのだから、疑いようもない。
なぜこのような建物でありながら、取り壊されることもなく残っているのでしょう。

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今なお解体されずに店舗が姿を留めている、その理由。
「ALiC日進生麦店」は、存続店舗。2019年の現在も、まだ営業中です。
唯一継続しているALiC日進として、細々と生き永らえています。

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ALiC日進のキャッチフレーズ「家電とホビー」はちゃんと掲げているものの、
専門店の部分は外されていて、その辺りはなにか配慮があってのことかもしれません。
実際、ホビーの扱いはないし、家電の陳列も見当たりません。かつての栄光は何処へ。
すでに積極的な営業は終えていて、昔の馴染みである顧客の対応に限定しての販売のようです。
高齢の利用者などは今でも近所の電器店に頼る人も多く、この生麦店も同様なのでしょう。
大型店舗のイメージが強いALiC日進も、地元密着という隠れた一面を持っていたんですね。

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古い店舗の外壁には「日進電気株式会社」と刻まれています。
その様式から1960年代以前のものと推測されるのですが、
そうするとALiC日進より古い時代の建物なのではないかという推測に至ります。
母体の創立は戦後間もない昭和22年と聞きました。当初このような小さな電器店から
始まったはずで、後年有名になった大規模店舗「ALiC日進」はこの企業の絶頂期の姿。
堂々と家電販売の社名を掲げていることから想像できるように、ここがALiC日進の生まれ故郷です。
あれだけ大きなお店が全部消えてしまって相当経ちますが、生麦には今も小さなお店が残っています。

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懐かしいロゴマークを掲げる、間違いなくあのALiC日進のお店。
多くの人の記憶している姿とは全く違うかもしれないけど、
でもこれを見て懐かしむ人は少なくないと思うんです。特に横浜市民には。

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駐車場もなく、通行人も少なく、通りすがりに立寄る人は皆無。
たぶん近隣の常連客からたまに電話が入ると対応するとか、そのレベルだと思います。
テレビCMで見たALiC日進とは正反対なお店の姿ではあるんですけど、
かつての街の電気屋さんはみんなそんなものだったはずで、ある意味「日本の電器店の原点」です。
横浜駅近くの繁華街に巨大なお店を出していたALiC日進も、始まりはこんな電器店だった。
昔返りとはよく言いますが、この会社も原点に還ってから消えていくのかな…
そんなことを考えてしまう生麦店の姿でした。

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もうホビー売場のワクワク感もないし、オーディオのマニアックさも感じることはできませんが、
ALiC日進という昭和の頃流行った人気店の名残は、現代でもかろうじて残っています。
あの懐かしいロゴを感じに、横浜辺りまで足を延ばすのも一興かと思います。
なにせ、失われてから辿ろうとしても、それはもう叶わないものですから。
残っている今のうちにしっかり記憶に刻んでおくことが大切かと考えるわけです。
興味のある方は、お早めにどうぞ。


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