ALiC日進を見に行ってきた(前編) | たまに昭和散歩

たまに昭和散歩

某ブログで公開していた記録を保管している場所です。
昭和の頃を感じられるいろいろな場所を、たまに調べています。

かつて神奈川県内を中心に出店していた「ALiC日進」というお店がありました。
「家電とホビーの専門店」と銘打ってテレビCMを放映。
神奈川県のチェーンなので、地元TVK(テレビ神奈川)でよく見かけた記憶があります。



特に横浜大洋ホエールズから横浜ベイスターズに代わる頃のナイター中継で頻繁に流れていたはず。
屋敷とか高木豊とか遠藤とか、ポンセとかパチョレックとか、五月女とかレスカーノとかがいた時代。
要するに昭和末期から平成10年くらいまでは盛んに宣伝していたのでしょう。
東京の各テレビ局でも流していたようなので、関東圏にお住まいなら知っている方もいらっしゃるかと。
しかしここも大型店の攻勢に追いやられてしまったのでしょう。
だんだんCMを見かけなくなったなと思ったら、いつの間にかお店もなくなっていた…という感じ。

私がよく訪れたのは旗艦店の横浜西口本店。ヨドバシカメラのすぐ隣にあったので
通る機会が多く、そのたびに立寄って眺めたものです。
当時のヨドバシはまだカメラ専門店の性格が強く、家電も取り扱いは豊富とは言えず、
玩具やホビーについてもテレビゲーム関連以外はほとんど販売していませんでした。
ALiC日進はカメラや時計、家電全般や高級オーディオ、そして模型など、多彩な売り場が充実。
特に地下の模型売場はプラモデルからラジコンヘリまでとても豊富で専門的な品揃え。
若者や子供にも入りやすく、まさに宝箱のような空間でした。
今のヨドバシカメラの売り場構成も、この辺りの延長にあるのかもしれません。
家電とホビーを一緒に扱うスタイルという点で、このお店は時代を先取りした存在だったのです。

最盛期には秋葉原にも出店していたと言われます。
私が見た記憶があるのはほんの一部なんですが、テレビCMにある通り
横浜駅西口本店・大船店・横浜駅店・川崎駅店・生麦店・鶴見西口店・秋葉原店と、
全7店舗のチェーンとして展開していたことが解ります。

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このうち横浜駅店・川崎駅店は駅ビル内店舗のはずですから、既に形跡は辿れません。
秋葉原店もかつての店舗位置すらはっきりしないので、探すのは困難でしょう。
残りの4店舗、横浜駅西口本店・大船店・生麦店・鶴見西口店は、形跡があるのでは…
そんなことを思いつき、今回調べてきた次第です。

今回のALiC日進は、平成まで営業を続けたチェーンですから、昭和の記録とは言えないかもしれません。
しかし昭和の頃全盛だったことに変わりはありませんので、取り上げてもいいのかなと考えます。
またこの対象についてはほかの多くの方も調べていらっしゃいます。従いましてこのブログ独自の
発見だとかスクープだとかそういうものではないこともおことわりしておきます。


●横浜駅西口本店

横浜駅周辺は長らく再開発が進まず、最近まで昭和の頃と大差ない景観だった気がします。
それでもデパートが別な大型量販店に代わったり、建物が建て替えられたりと、
少しずつですが様子を変えてきました。近年いよいよ駅前地区の都市開発も盛んになっています。

横浜駅はかなり古い駅ビルでしたが、現在大規模な改装が行われています。
数年後には全く新しい姿に生まれ変わるはず。どんな風景になるのか、楽しみです。

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人口370万の横浜市のターミナルですから、まだ百貨店が健在。
東口にはそごう、西口には高島屋が盛業中です。
かつては三越もあって、高島屋と共に西口のランドマークとして輝いていました。
しかし百貨店全盛の時代は去り、三越の建物は今ではヨドバシカメラに。
三越がここまで衰退してしまったこととヨドバシカメラがこんなに巨大になったこと、
どちらもあの頃は予想すらできませんでした。

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ALiC日進の本拠地でもあった横浜駅西口。
ただし横浜駅西口本店があったのはこの駅前広場ではなく、ちょっと離れた所です。
高島屋の周りを迂回して、その場所へと向かいます。

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相鉄の駅辺りから西に向かってまっすぐ伸びる、やや狭い道。
この方面が横浜駅西口の歓楽街で、いくつもの商業施設や娯楽施設、飲食店などが集まります。
以前は家電量販店やカメラ専門店などもこちらに並んでいたのです。

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ビックカメラ。今もこの歓楽街に留まる貴重な大型カメラ・家電店。
斬新な建物ですが、平成初期からあったと記憶しています。

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建物の外観にも度肝を抜かれましたが、なにより驚いたのはビックカメラが横浜に進出してきたこと。
あの頃はヨドバシ・さくらやの取っ組み合いという感じでしたが、そこに乱入してきたのです。
それもこんなに立派なお店を作ってしまったのだから、バランスが一気に崩れました。
ヨドバシが一気に縮んでしまったように見えたものです。当時のヨドバシカメラ横浜西口店は
とても小規模なお店だったんです。

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今ではこの辺りに残るカメラ・家電量販店はビックカメラだけになりました。
この先に東急ハンズはあるけれど、ほかに目立っている大規模店といえばこれくらい。
今や全国規模にチェーン網を広げている、ドン・キホーテ。

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かなり大きなビルです。上層階の壁面が傾斜したシルエット、そして大きな看板が目印。
…と、どこかで見たような建物ですね。

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ALiC日進のCMの最後に出てきた建物と非常によく似てます。
そう、同じ建物です。ドン・キホーテのビル、これがALiC日進横浜駅西口本店だったところ。

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今やどぎついドンキカラーで飾られた、このビル。経緯がいろいろありまして…
21世紀に入ってすぐ、ALiC日進が閉店。その後ヨドバシカメラの店舗になりました。
今まで小さな売り場面積しか所有していなかったヨドバシにとって、大規模店化は悲願でした。
ところがヨドバシカメラはその後も劇的な発展を遂げ、ついに駅前の三越跡に移転。
再び空き店舗となったこのビルに目を付けたのが躍進の一途だったドン・キホーテ…という流れ。

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ALiC日進の時代は昭和らしいシンプルな外装でしたが、今ではこの通り。
同じ建物でも主変わればすべて変わってしまうものです。
24時間営業で早朝から深夜まで輝き続け、かつてを知っているものとしては違和感ばかりです。
でもこれがこの街の風景なのだから、多くの人が肯定的に受け止めているんだと思います。

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さて、私はドン・キホーテの外装とか営業スタイルを観察しに来たのではありません。
あくまでALiC日進の跡を辿るためにやってきたんです。
だから、ちゃんと記録しています。そう、こんなカットの中にも、しっかりと当時の名残が。

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商品搬入口の上部に、ALiC日進の名が輝いていました。
昔は上層階を本社事務所として使っていたのだと思われます。
20年近く前にALiC日進のお店はなくなったんですが、ビルの名称としては今なお残っています。

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地下の売り場はどうなっているんですかね。昔はエスカレーターで下りた途端、プラモデルだらけ。
頭上に売り場を周回するようにレールが敷いてあって、大きな汽車の模型が走ってました。
エンジンで動くラジコンカーやラジコン飛行機・ラジコンヘリまで、濃い品揃え。
当時本気でラジコンヘリが欲しくて、横浜に行くたびに眺めてました。
今のような手のひらに乗るような小型ラジコンヘリでも、小型ドローンでもなくて、
全長1mくらいありそうな燃料で動く本格的なものですよ。
この売場に行くといろんな夢が見られたんですが…
今やどこにでもある、ただのドン・キホーテになってしまった。

ドン・キホーテのビル、すなわちALiC日進ビルの左隣にある、カラオケ専門店。
雑居ビル1棟を借りて営業している、繁華街ならどこにでもありそうなお店なんですが…

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この5階建ての小さなビルが、ヨドバシカメラ横浜西口店の最初の店舗があったところです。

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建物は当時のままなのがわかります。今では巨大店舗ばかりになったヨドバシですが、
カメラ専門店の頃は大型家電もホビーも扱いがなく、この狭いビルで成り立っていたのです。
すれ違いすら大変な狭い通路の両側にあらゆるアイテムが並び、圧縮陳列状態でした。
今のドン・キホーテの狭苦しさより、すごかったかもしれません。
さすがにカメラはたびたび買えませんでしたが、当時写真部所属だった私は
カラーやモノクロのフィルムを買いに、3階だか4階にあった売場に通ったものです。

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元ヨドバシの5階建てカラオケビルの奥に、元ALiC日進の巨大なドン・キホーテ。
…と、この面からALiC日進ビルを見上げると、貴重なものが残っています。

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この側だけは、屋上の看板がALiC日進の時代のまま残されているのです。
これを眺めただけで時代が20年巻き戻されたような、そんな錯覚を受けます。

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隣接の区画には、これまた昭和の残影といえそうな、ダイエー。

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残念なことにダイエー横浜西口店は、間もなく長い歴史に終止符を打つようです。
「サンコー」「マルエツ」という系列スーパーと共に、神奈川県民には馴染みのあるお店でした。

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創業から30年以上続く企業というのは、ほんの一握りなんだそうです。
横浜のこの一角を見るだけで、そんなことが解る気がします。
大手スーパーの代表格だったダイエーが廃れ、家電・ホビーの専門店ALiC日進が消え、
現代で全国規模どころか海外まで店舗網を拡大したドン・キホーテが景色を塗りつぶしていく。
時代の流れというのは世界を変えるけど、時に残酷だなと思います。
私の知っているこの街の風景は、あっという間に新しい景色に作り替えられてしまいました。

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でも、しぶとく生き残っている「昭和」も、こうやって存在しています。
今だからこそ大切に感じるこんな眺め。いつまでの現状のまま残ってほしいものです。

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●鶴見西口店

ALiC日進のテレビCMに出てきたのは横浜駅西口本店だけですから、
ほかの支店については外観が殆ど記録されていないことになると思うんです。
鶴見西口店も、当然映像に出てくることはありません。
ところが映像以外の個人的な記録の中になら、意外と見つかるのかもしれません。
私の持っている記録の中にも、当時の断片がありました。

たぶん平成に入って間もなくの頃だと思うんですが、鶴見駅付近で撮った写真がありました。
朝の時間帯に訪れた時、駅前ロータリーに集結してくる路線バスを撮ってみたものです。
その背景に、偶然ALiC日進鶴見西口店の一部が写り込んでいました。

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このヒントがあれば、店舗跡を見つけることは容易です。
早速鶴見へと行ってみることにします。

30年近くの時間を経て、鶴見駅前のロータリーは様子が一変していました。
昔は中央に植え込みがあって、その周りをバスが回っていた気がするんですが…
あまりに立派になりすぎて、当時と比較することすら困難です。

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ただし方向感覚や位置関係などはすぐに思い出しました。
確かこの辺からあっちのほうを向いて撮っていたはず…とその先を見ると、
どうやらそれらしい外観の建物がしっかりと残っていました。

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バスのスタイルも進化して、建物の外装もカラフルになったけれど…
間違いなくあの緑色のお店が、ALiC日進鶴見西口店だった建物ですね。

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神奈川県内を中心に数多くの店舗を展開しているドラッグストアーチェーンです。
神奈川で発展する企業という点ではかつてのALiC日進と共通した部分がありますが、
こちらは現在80店近い店舗数までに至っていて、比較にはならないかもしれません。
現代的なデザインで当時の面影は薄いですが、建物そのものは改築されることなく使われています。

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もうALiC日進の名残もあまりないし、そもそもこの街に暮らす人の過半数は
過去家電とホビーの専門店だったことなんて記憶から消えているのではと思うんですが…
私はその残影を探しに来ていますから、少しでも拾って帰りたいのです。

で、店舗右側の脇道に入ってみます。何かあるような気がします。

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ありました。ビル名の表示部分に、しっかりと。
「ALiC日進ビル」。横浜駅西口本店跡と同名の、堂々とした名称。

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ALiC日進は、駅ビル店などを除いて自社所有ビルの形で出店を進めていたようで、
そのため現在も建物名としては変わらず存続している…という事情でしょう。
そう、「ALiC日進」は経営破綻して消えていった企業ではないのです。
従って末裔は今でも不動産業などとして存続しているとのこと。
ここも「株式会社日進」所有物件、それをドラッグストアーチェーンが賃貸して営業しています。

よく見ると、駅前のバスターミナル以外はあまり変わっていません。
「ALiC日進ビル」の右隣の不動産屋も、左隣の居酒屋の建物も、平成初期のまま。
奥の交差点角にあるマックの入るビルも、その左に並ぶ雑居ビルも、当時と変わらず残ります。

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この画像を見る限り、一番変わっているのは元ALiC日進のドラッグストアーで、
そのほかの風景はほとんどそのまま保存されているようにすら思えてきます。
時代の変化を探ると変化した部分ばっかり並べようとしてしまうんですが、
この街のように変わらずに残っている駅前風景というのも、各地に結構あるのかもしれません。

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「ALiC日進」については、もう少し調べています。
続きは後日「後編」としてまとめさせていただくつもりです。
 

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