20年ほど前、松尾芭蕉『おくのほそ道』を読んでいた。

 

朗誦の会というのがあって、「一緒にやらないか」と誘われた。主催者が『おくのほそ道』を始めから終わりまで全部暗記していて、本を見ないで朗々と諳んじる。

 

主催者から誘われて3人。計4人のこぢんまりとした会で、主催者宅に月1で集まった。

 

会員のそれぞれが1章を暗記してきて、みんなの前で朗誦するというのが建前であった。

 

自分の場合は、全くといっていいくらい覚えられないままだった。

 

前提として『おくのほそ道』を何度も読み込む作業を続けていたので、ある程度の理解は進んだかもしれない。

 

主催者の他に網一人の会員がそのうちに全部暗記して朗誦できるようになった。

 

5、6年して会は解散した。

 

そして『おくのほそ道』から遠ざかったまま今日に至る。

 

猛暑日の避暑を目的としてときどき宇城市立図書館に行くようになって、本棚を眺めていると「おお、これは」と目に入ってきたのが、童門冬二『異聞 おくのほそ道』。

 

実は、10年ほど前にこの本を読みかけたことがある。しかしながら、とうとう読まないまま放置していた。それで改めて手に取ったのである。

 

 

童門冬二『異聞 おくのほそ道』は、以下のような構成である・・・。

 

「西行法師の歌枕を訪ねたい」と告げ、弟子の曾良とみちのくへと旅立った松尾芭蕉。その旅には二人の同行者がいた!? 徳川光圀の家臣介三郎と、将軍綱吉の側用人柳沢吉保の密偵すまだ。光圀と吉保は共に芭蕉が相手方の密命を受けていると勘ぐっていた。そして、芭蕉にも、歌枕を訪ねる以外にある目的があった…。「おくのほそ道」をベースに、斬新な発想で描く時代長編。

 

 

芭蕉と曽良の旅にその時代の将軍綱吉、そして側用人柳沢吉保。

副将軍水戸光圀、助さん、格さん。

加賀藩主前田綱紀が絡む。

その時代の政治経済の動きを絡めながらも、おくのほそ道を旅する芭蕉の俳句への道をたどる。

興味深く、わかりやすく物語が進行する。

 

小説の真偽のほどはさておいて、芭蕉の俳句の神髄に迫るものがある。こんな風に解きほぐしてもらえば、難しい事柄もわかりやすくていい。