『満天星(どうだん)の花は咲いているか』
九重山扇ケ鼻をめざし、瀬の本登山口から歩き始める。
杉林の間の山路を両側から覆うようにコガクウツギ(小額空木)がせり出している。
清楚な白い花が目にまぶしい。
女児の孫のように可愛い。
黒土。
濡れていると滑る。
一応、チェーンアイゼンを備えているが、この日は大丈夫。
杉林を抜けると広葉樹林帯。
急坂が続く。
こんなにきつかったか。
これまで何度もこの道を上ってきたが、今まで感じたことのないきつさ。
のろくても一歩、また一歩と歩みを進める。
ようやくにして少し開けた草原に出る。
目の前にあるのは、岩井川岳(いわいごうだけ)の平らな山容。
そして振り返れば、瀬の本から歩いて来た山の稜線を見下ろす。
この日、下界では気温が30℃になる。この場所は下界とは比較にならないほど涼しいのだけど、山歩きをするにはちと暑い。
ミヤマキリシマは咲いている。
満点星(どうだん)の花に出会えることを楽しみにここはひたすら歩くのみ。(続く)