『満天星(どうだん)の花は咲いているか』

 

 

瀬の本登山口から扇ケ鼻を目指す。

扇ケ鼻というのは、どこの登山口からも見えない。また見えたときには特徴のないなだらかな丘のようであり、九重山の中では注目されることのない山のようだ。ただし、ミヤマキリシマが咲く頃だけは、扇ケ鼻を訪れる人が増える。九重連山の山並みの中腹に薄桃色の山肌をまとう光景を見るためである。

 

6月半ばになると、ミヤマキリシマが咲いてはいるが、花の時季を終える頃でもある。おそらくは少し前までの混雑と言っていいほどの人の群れはなくなったであろうが、それでもまだ少なくないだろう。

 

 

さて、瀬の本登山口から歩き始めると、すぐにコガクウツギ(小額空木)の花が目にとまる。数年前までこの場所によく来ていた。うき山の会の牧野とみ子ことFさんからコガクウツギを教えてもらったのが最初ではなかったか。それまでにいろんな種類のウツギを教えてもらったが、このコガクウツギは唯一無二の存在になった。その後、人吉球磨地方の白髪岳や球磨郡相良村の仰烏帽子山などでよく目にするようになるからである。つい最近では、菊池郡旭志村の鞍岳で見て来たばかりだ。緑葉のなかに純白の花を見ると、瞬殺されるのだ。(続く)