ぼくはピエロの人形だ。人形だから動けない。しゃべることもできない。殺人者は安心してぼくの前で凶行を繰り返す。もし、そのぼくが読者のあなたにだけ、目撃したことを語れるならば・・・・・・。そのピエロが来た日から、次々に起きる悲劇。極限の緊張感。謎と伏線の精巧さに息を吞む、超人気作家、初期の傑作ミステリー。

 

 

東野圭吾 ひ17 6 十字屋敷のピエロ 講談社文庫

 

 

文庫本の表紙がダブル。ネット上から拝借して一枚目と二枚目を貼り付ける。文庫本の活字は、少し前の小さい字のまま。その分、価格は590円。こちらも変わりないのだろう。そんなところからもこれは初期の作品であるとわかる。

 

ピエロが語るお話に読者は驚き、翻弄される。

この物語の真実は何なのか?

これはどうしてなにがどうなっているのか。

混乱したまま事件が続発する。

あちこちに散乱した事実がどのように収斂していくのか、見当がつかない。

 

しかしながら半ばを過ぎるあたりから、どうしても実行犯と考えられる人物は彼しかいない。

しかしなぜ?

そうして事件の真相が明らかになると、本を読んでいる途中、なんとなくぼんやりと頭の片隅に浮かんでいるイメージがくっきりと姿を現したように思う。

これはカタルシス。

悲劇がもっている、観る人の心に怖れと憐あわれみを呼び起こし,その感情を浄化するという効果

これが東野圭吾のミステリーなのだ。