少し前に西條奈加『まるまるの毬』を読んだ。蔦屋八代店をのぞいているとき、「南星屋シリーズ」第2弾『亥子(いのこ)ころころ』文庫本を見つけた。そのときまで『まるまるの毬』の続編があると知らなかった。そして帯には第三作『うさぎ玉ほろほろ』が刊行予定と記されている。

 

へぇ~、そうだったのか。これはシリーズなのだ。

 

 

裏表紙

店の主の治兵衛が諸国をめぐり見覚えた菓子を手頃な値で売る「南星屋」。娘と孫の三人で店を繁盛させた治兵衛は、手首を痛めてしまう。納得のいかぬ代物に苛立ちが募る中、店先に雲平という男が行き倒れていた。京から来たわけを訊くと、込み入った事情があるようで・・・・・・。荒んだ心をほぐす人情味溢れる時代小説。

 

前の『まるまるの毬』読後の感想がそうであったけど、ま、いわば「面白かった」というほかに何も書いていない。そして今回もまた同じ。芸も能もないのだけど、「面白い」と書くほかない。

 

「南星屋」の主、娘と孫のキャラクターが立ち、それぞれが躍動する。そして菓子作りにまつわるディテールが興味深い。これまで見たことのない菓子についての蘊蓄などは、深い知識に裏打ちされている。菓子を買いに来る江戸の人々の立ち居振る舞いが微笑ましい。そんなことを思いながらこの本を読んでいる間は、にこにこ。それに当時の武家社会の在りようや懐具合なども興味深い。

 

第三作『うさぎ玉ほろほろ』もすぐ読みたいな。