忠臣蔵は世界最高の騎士道物語だ――。元禄十四年、赤穂藩主・浅野内匠頭は吉良上野介に対し刃傷、即日切腹の裁定が下る。仇討ちかお家再興か。未曽有の事態のなか、家老・大石義雄の決意は“君、辱められし時は、臣死す”。すでに一命を賭す覚悟だった。義雄は陰で支える“四十八番目の志士”とは!?史上名高い四十七士の復讐劇を新たな視点で描き切る歴史巨編!

 

 

おお、そういえば、師走といえば四十七士の討ち入りなのだなぁ。さて、忠臣蔵は大河ドラマで何度もとり上げられており、テレビを視聴している。映画でも赤穂浪士の討ち入りシーンが繰り返されてきた。そのため、忠臣蔵の大筋については知っている。しかし、本を読んでいない。知っているから読まなくていい。ま、そのように思う。しかし、今回は、伊集院静が著者。ついこの前、訃報が届いたばかり。『ノボさん 小説正岡子規と夏目漱石』『ミチクサ先生』に続けてなにか読もうか。読み易く分かりやすい文章、著者の人を見る目はやさしくあたたかい。

 

 


 

本を読み進めると、赤穂浪士の吉良邸討ち入りに至るまでの全体像をしっかりと描いて、かっちりとした構成である。テレビを見たというだけで、なんとなく知っている気になっていたけど、実のところちゃんとしたことは何も知らなかったのだと、まず思う。そして人物についてもテレビ視聴した影響を受けているのであるが、本においては一つひとつエピソードを積み重ねながら人物像が浮かび上がってくる。とりわけ大石義雄が群を抜いて魅力がある。これは正統派時代小説というべきか。

 

いざ討ち入りへと向かう赤穂浪士の動向が緊迫の度を増し、いよいよ読み物として目を離せなくなる。そして一気にクライマックスに至る。そしてその後の余韻がすこぶるよくて、読後感のよい小説である。まだそれほど伊集院静を読んでいないけど、もしかしたらそれが伊集院静なのかもしれないと思う。