『鬼平犯科帳』『剣客商売』『真田太平記』を読み終え、「もうしばらくは池波正太郎を読まなくてもいい」と思っていたが、蔦屋書店下通で本棚を眺めながら物色しているときに、つと手を出したのが『人斬り半次郎 賊将編』。

 

中村半次郎は、西郷隆盛と一心同体にして、幕末から明治を駆け抜けた。必ずしも「中村半次郎を読まずにはおられない」というのではなかったけど、“西郷隆盛が征韓論、西南戦争になぜ巻き込まれたか”を解き明かすのに、この本がもしかしたら最適かもしれないと思う。

 

自分にとっては歴史における“なぜ?”に応えてくれるが池波正太郎とすら思っている。

例えば、加藤清正は徳川により毒殺されたのか!?

については『火の国の城』にとり上げてある。

これは池波正太郎の初期の作品、仮にフィクションであったとしても、もしかしたらそうだったのかもしれないと思わせてられる。そしてそれは大筋において正しいのではないか。

無論のこと、単なる偶然のなせる技であり、真相は服毒ではなく、その他の病気ということも考えられるのだが・・・。

 

かくして『人斬り半次郎 賊将編』を読み始めると、幕府においては徳川家茂、一橋慶喜、朝廷においては孝明天皇、岩倉具視、薩摩藩においては西郷隆盛、大久保利通、その他の動きがしっかりと描かれている。

 

 

裏表紙

維新は成った。中村半次郎改め桐野利秋は、西郷の腹心として存分に働き、日本初代の陸軍少将となる。ザンギリ頭にフランス香水をつけ、得意絶頂の桐野だった。が、西郷は新政府のやり口に苦りきっていた。そしてついに、進退をかけての征韓論争に敗れ、西郷は帰郷。桐野ら薩摩隼人の心酔者たちは放っておくことができない――城山での壮烈な最期まで、激動の時代を駆けた一快男児の半生。

 

幕末のおける人斬り半次郎に対して、必ずしも好感を持ってない。明治維新後、桐野利秋となってからはなおさら好きになれない。あの西郷隆盛を担ぎ上げて西南の役を起こすに至るのであるから・・・。ま、しかしながら、池波正太郎の描く半次郎は、まことに人間くさい。どちらかといえば嫌われ者に違いないとしても、生身の人間として「さむありなむ」と思わせるところがある。そして読み終わる頃には桐野利秋のファンになっている。これぞ池波正太郎の筆のなせる業であろう。

 

 

P.S.

文庫本の後ろについている解説文を読むと、池波正太郎が新国劇の劇作家をしているときに「人斬り半次郎」をとり上げて好評を博したとのこと。