自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気分になって、そりゃ気持ちいいよな――。息子が不登校になった検事・啓貴。初めて恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繋がりは、“多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。

 

この本を読むきっかけは何かというと、稲垣吾郎と新垣結衣主演映画『正欲』が上映間近であることを知ってからになる。

文庫本のカバーに添えられている第34回柴田錬三郎賞受賞というのもその気にさせるのかもしれない。

これまで読んだどの本が柴田錬三郎賞受賞作品だったか、記憶にはないけど、この頃読んだ何冊かの本がそうだったように思う。

 

正欲(せいよく)「正欲」には、性的欲求だけでなく、生きる上でおろそかにすることができないような承認欲求や生存欲求のような欲も含まれています。正欲(正しい欲求と書いてせいよく)その向かう先がなんであれ、欲求があるのは本能として正しいものであり、他社がとやかく言うものではない。

 

 

本を読み始めると、少々面食らう。

ま、しか、し冒頭部分を除けば、ああ、これが稲垣吾郎、不登校になった小学3年生の息子に悩む検事なのだなと、読み進める。

次が新垣結衣、そして女子大学生は誰かな?

みたいな感じで読み進めていくと、それぞれの人物に感情移入してしまう。

 

 

ゴリゴリの保守人格のがねさんからすれば、ダイバーシティ(多様性)というのはなかなか馴染めないのだけど、それぞれの物語に吸い込まれる。

それぞれの物語が激しく動き始めると同時に、相互に絡み始める予感。

それに「寺井啓喜」、「桐生夏月」、「神戸八重子」「佐々木佳道」「諸橋大也」の章。いつも3冊くらいの本を同時並行して読むくせがついているのと同じだなぁと思ったりする。

 

う~む、何も考えずに読み始めたのだけど、これまで避けてきたことがらを主題として扱っているので、少なからずショックを受けながら読み進めることになった。多くの点で共感する部分もある。映画の封切りが間近に迫っているのであるから、映画も観るとしようか。