『鬼平犯科帳6』

舟の上で“隠居”を待ちながら、のんびりと交わす老船頭と平蔵のかけ引きの妙味(「大川の隠居」)。密偵としての任務と、かつて愛した男への思いに揺れるおまさ。じっと見守っていた平蔵が動く(「狐火」)。シリーズ屈指の名作二篇ほか、「礼金二百両」「猫じゃらしの女」「剣客」「盗賊人相書」「のっそり医者」の全七編を収録。

 

『鬼平犯科帳7』

この年二十の平蔵の長男・辰蔵は、剣術の稽古そっち退けで、女遊びに打ち込んでいる。いまは“芋の煮ころがしのような小むすめ”に夢中だ(「隠居金七百両」)。緩急自在の鬼平の魅力ここにあり。ほかに「雨乞い庄右衛門」「はさみ撃ち」「掻堀のおけい」「泥鰌の和助始末」「寒月六間堀」「盗賊婚礼」の全七編を収録。

 

若かりし平蔵があわや盗人の助をやろうとした話。これは中村吉右衛門の鬼平犯科帳をTV視聴したと記憶している。紙一重のところで盗人にならなくて済んだ。

 

『鬼平犯科帳8』

火付盗賊改方の同心・小柳安五郎は、一昨年、妻と子をうしなった。以来、人が変わったように、われから危難に立ち向かっている。そんな小柳が罪人を逃した胸の内とは(「あきれた奴)。四十をこえた平蔵の剣友・岸井左馬之助が思い悩む(「あきらめきれずに」)ほか、「用心棒」「明神の次郎吉」「流星」「白と黒」の全六編を収録。

 
 

『鬼平犯科帳9』

女密偵・おまさと、かつては本格派の盗賊の首領であった大滝の五郎蔵。二人は平蔵の指示で一つ家に住み、盗賊の見張りを続けるが、その顛末は――(「鯉肝のお里」)。平蔵の愛犬となるクアとの出会いを描く名作(「本門寺暮雪」)ほか、「雨引の文五郎」「泥亀」「浅草・鳥越橋」「白い粉」「狐雨」の全七編に、エッセイ一篇を特別収録。