坂本龍馬が認めた男・陸奥宗光は、明治維新後、外務大臣として欧米列強と対峙し、不平等条約の改正に尽力する。そして、日本の尊厳をかけて強国に挑まんとする陸奥を支え続けたのは、妻の亮子だった。本書は、著者が最期に「これだけは書いておきたい」と願い、病と闘いながら綴った物語。未完ではあるが、著者の歴史作家としての信念を感じ取れる貴重な作品である。坂本龍馬の姉を描いた短編「乙女がゆく」を特別収録。葉室麟による未完の小説。明治維新後の陸奥宗光を主人公とする物語。
読んでいると胸が痛くなるような、難しい世界情勢下にある日本。
如何にして課題を克服するか。
などと明治の歴史をたどるのではあるが、そんな中、奮闘する男たちを支える妻たちの姿が清しい。
陸奥宗光の妻・亮子。
旗本の妾腹の娘にして、長じて新橋柏屋の芸妓、小鈴として評判を得た。明治5年17歳で後妻となった。
伊藤博文の夫人・梅子。
元は下関の芸妓で小梅と名のっていた。鹿鳴館の舞踏会外交などで活躍する姿が生き生きとして微笑ましい。
その他、大山捨松など、明治の女性たちも負けてはいない。そんなところが小説ならではの面白さがある。

