湊かなえ『続・山女日記 残照の頂』の前に、瀬戸内寂聴『花芯』収録の5つの短編のうちのはじめの『いろ』を読み終えた。

なんだか「うわ~」という感じで圧倒された。

読後感はよろしくない。

 

湊かなえは“イヤミスの女王”と呼ばれているが、『山女日記』はすこぶる読後感がよろしい。爽やかな感動に包まれているときに、瀬戸内寂聴『花芯』を読むのかと、気が重かった。

 

 

ともかく読んでみようと、次の『ざくろ』を読み始めると、ああ、これは4歳の女児を残して家を出た自らの話ではないか。短くさらっとまとめられているが、この小編に瀬戸内寂聴の半生が詰まっているようだ。これは抑制が効いているし、素直な独白ではないかと思う。

 

では、次の『女子大生・曲愛玲』。語り手は大東亜戦中の北京在住、大学教師の嫁。夫の同僚女性教師が可愛がっている女子大生曲愛玲の奔放な生き様が描かれる。これはいろいろな要素が背景にあって、主観と客観とのバランスがよく、なかなかに面白かった。

 

 

そして『花芯』。うむ、若い頃ときどき読んでいた雑誌『オール読物』に掲載される小説のように感じ、女性の筆の特徴である文章が滑らかで、かつ、面白く読んだ。

 

 

一応、瀬戸内寂聴の小説とはどのようなものか、試しに読んでみることができた。ま、それ以上に瀬戸内寂聴を読む気にはならなかった。