いや~、ずいぶん久しぶりの三浦しをん。この頃のように文庫本を読むようになるきっかけを作ったのが、三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』シリーズだったかもしれない。

 

三浦しをん『舟を編む』なんかを読み始めて、いつの間にか本を読む癖がついたように思う。三浦しをんにはそれだけの思い入れがある。

 

ある程度、文庫本を読んだところで、三浦しをんから遠ざかった。う~ん、ホンと久しぶりだな。

 

ふら~と熊本市内に出かけ、蔦屋下通店で平積みになっている三浦しをんを見た。

それがこの本。

文庫本の(上)(下)巻。

 

 

ドキドキしながら文庫本を眺めると、(上巻)帯の裏

「植物には、能も神経もありません。つまり、思考も感情もない。人間が言うところの、『愛』という概念がないのです。それでも旺盛に繁殖し、環境に適応して、地球のあちこちで生きている。不思議だと思いませんか?」(本文より)

 

さらに(上巻)裏表紙

恋愛・生殖に興味ゼロの院生・本村紗英に、洋食屋の見習い・藤丸陽太が恋をした。殺し屋のような教授、サボテン一筋の後輩男子に囲まれ、本村は愛しい葉っぱの研究に没頭中。実験やイモ堀り会に潜り込む藤丸の想いは花開くのか。「知りたい」という情熱を宿す人々の愛とさびしさが心を射る長編。(全二巻)

 

うわ~、これはまた興味津々。

 

『舟を編む』に近い感じかな?

などと思いながらページを開く。

うん、これはユーモア小説、楽しく面白い。

 

本村は大学院生。自分のやりたいことができるのは恵まれた環境にあるといえるけれど、大学院生の生活は質素である。やりたいことを貫くためには、諦めなければならないことがある。夢と現実のはざまを浮遊している。

 

ああ、三浦しをん、この本を今年の“推し”にしたいなぁ。

 

 

(下巻)帯の裏

本村と会ってから、藤丸には世界がこれまでとはちがって見える。料理で使う野菜はよりうつくしく輝きを帯び、なんということもない都会の風景のあちこちにある緑が目にとまる。なんてたくさんの植物が、地球上で生きているんだろう。さびしさを忘れるほどに。(本文より)

 

(下巻)裏表紙

葉っぱの実験をこつこつと続ける院生・本村紗英を、どん底に叩き落した大失敗。研究仲間(変人集団)も戸惑うなか、窮地に光を投げかけたのは料理人・藤丸の反応で――。人生も、実験も、筋書きがないから面白い。世界の隅っこが輝き出す日本植物学会賞特別賞受賞作。(全二巻)

 

T大理学部研究室内の登場人物、出来事が続くけれど、門外漢にとってはのぞき見するような感覚。

無縁の世界に入り込むような感覚。

失礼ながら、学問の世界は涙と笑いに包まれている。

そして愛と悲哀に満ちている。