上巻。
先日、蔦屋書店下通にて数冊の本を仕入れた。そのうちの一冊が、夢枕獏『神々の山嶺(かみがみのいただき)』。
ブロガー、エリーさんによる推奨本。
夢枕獏をこれまで読んだことがない。なんとなくだけど、SFというか、荒唐無稽、破天荒な物語作家という印象がある。読み始めると、至極、まじめな小説ではないか。
うむ、どうも思っていたことと違う。
しかも神々の山嶺とはエヴェレスト。
むむ。狐につままれたような心地がする。
いやいや、まだ序章を読み始めたばかりだ。
まずは序章を読み終わってからの話だ。
と、読み進めていると、あれ~、これって映画があったじゃないか。
岡田准一。TVで予告編を見たぞ。
と、親しみが湧いてくる。
さて、小説の種明かしになるけど、ここで文庫本の裏表紙
1924年6月8日、世界初のエヴェレスト登頂目前で姿を消した登山家、ジョージ・マロリー。彼の登頂の可否は、登攀史上最大の謎となった。鍵を握る古いコダック――マロリーのカメラをカトマンドゥの裏町で手に入れた写真家の深町は、カメラに誘われるようにその男に出会う。孤高の登山家、羽生丈二。数々の難所に挑み伝説となった男は、挫折を経て失踪していた。羽生の命を懸けた最後の挑戦とは?山岳小説の最高峰!
もう一つ、思い出した。
ジェフリー・アーチャー『遥かなる未踏峰』を読んでいる。ジョージ・マロリーのエヴェレスト登頂シーンについてはあまりよく覚えていないけれど・・・。この本を読み終えてから、再読しようか。
それから少し前に唯川恵『淳子のてっぺん』を読んでいる。女性登山家、田部井淳子の一代記。この中に出てくる日本の山屋たちの生態というか、在り様は共通している。その中でうごめく山屋たちの気持ちも・・・。
この物語の前半が終了した。
登場人物が固まってきて、それぞれに癖のある人物であるが、フォーカスが絞られてきた。
下巻。
ドキュメントのように物語が進む。そのうち小説ならではの展開が待ち受けている。それぞれのパーツが嵌まるべきところに嵌まると、羽生丈二のエヴェレスト南西壁、冬季無酸素単独登攀が始まる。
ここで下巻裏表紙
世界的な難所、ゴランドジョラスでの単独行で滑落、負傷しながら奇跡の生還を果たし、伝説となった羽生丈二。カトマンドゥで別人として生きる男が狙うのは、エヴェレスト南西壁、前人未到の冬季無酸素単独登攀!導かれるように羽生に邂逅した深町は、彼を追ってエヴェレストに入る。羽生の挑戦の行方は?深町が目撃したものとは?山に賭ける男たちの姿を描ききり、柴田錬三郎賞に輝いた夢枕獏の代表作!
そしてここまでくれば、物語は上流から下流に川が流れるように自然になる。先を急ぐことはない。じっくりと一行ずつ静かに味わえばいい。クライマックスが待っている。
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オシマイまで残すところ100ページ。
エヴェレスト南西壁、山頂まで250mに羽生丈二がいる。
深町のカメラがとらえている。
雲が流れてきて山頂を覆う。
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読み応えのある山岳小説だった。エリーさん、ありがとうございました。