宮本輝『流転の海』を読み終わった後、ほとぼりが冷めたころに読むだろうと見当をつけて2冊の文庫本を買っていた。
1冊目が『夢見通りの人々』で、これは宮本輝の初期作品のようだが、すぐに読み終えた。
そしてもう1冊が『草花たちの静かな誓い』。
この本は2020年1月25日第1刷だから、最新作か。
裏表紙
アメリカに住んでいた叔母が修善寺で亡くなり、突如、4200万ドルもの莫大な遺産を相続することになった弦矢。遺骨を抱え、弁護士とロサンゼルス郊外にある叔母の家に向かった。そこで白血病で死んだはずの叔母の娘・レイラが行方不明だと知らされる。27年もの間、叔母はなぜそのことを秘密にしていたのか、レイラはどこにいるのか。弦矢はその謎を追い始める――。運命の軌跡を辿る長編小説。
読み始めは宮本輝の小説らしからぬというか、なんだか乾いた調子の文章で、翻訳物を読み始めたかのよう。小説の舞台が日本からすぐにロサンゼルスに移るからだ。
やがてミステリー小説になるが、菊枝叔母さんが残した邸宅の草花との語らいが繊細にして「これは宮本輝だ」と思わせる。
物語が次第に真相に近づき緊迫してくると、もはや物語に囚われている。虚であるはずの物語を、あたかも事実かのように思っている。
そして迎える静かな終焉。
それは新たな物語の始まりなのだ。




