この本はブロガーさんがとり上げていた。葉室麟の小説であり、外れのない本として手にした。

 

裏表紙

関ケ原の戦から十年後、三成の娘・辰姫が津軽家に嫁ぐ。藩主の信牧と睦まじい日々を送るも、その三年後に家康の養女・満天姫が正室として当主のもとへ。辰姫は上野国大舘へ移るが、のちの藩主となる長男を産む――ふたりの姫による戦国時代の名残のような戦さを描く表題作ほか、乱世の終焉を描く短編も収録。

 

 

あらすじをたどるような筆の勢いである。とんとんとんと話が展開する。

 

 

満天姫は徳川の血を引く者、辰姫は石田三成の娘。深き因縁で結ばれる2人ともに津軽信枚に嫁す。

 

 

主題は津軽家の存続に係わる人々の生きざまにあるが、傍題において福島正則についても触れられる。満天姫はかつて福島正則の婿養子、正之に嫁し子をなしていたが、正之が廃嫡されると子、直秀を伴って実家へと戻っていた。

 

その後、福島正則は安芸五十万石の改易の憂き目に遭う。そのことの内実が明らかにされる。徳川2代将軍秀忠、3代将軍家光の時代に豊臣恩顧の大名家が次々に改易されるが、そのうちの福島正則がどのような運命をたどるのかが記されている。

 

高台院(秀吉の妻、寧々)の存在も絡めてスケールの大きい構図が浮かび上がる。

 

ま、これは手に取って読むにしくはなし。

 

小説に登場する人物の見事な美しい生き方に比し、現代に生きる日本人の、無論のこと自分自身を含めてではあるが、なんだか情けなくなる。これ以上、何も言うまい。

 

 

葉室麟『鳳凰記』

 

『鳳凰記』は、講談社文庫の葉室麟『津軽双花』に収録されている。『津軽双花』の“おまけ”である。『津軽双花』において太閤秀吉の正室寧々が、秀吉亡き後、高台院として登場する。そのなかで徳川家康による大阪城攻めの際の大阪方、秀吉の側室茶々、淀殿について語る。いわば、その部分をとり上げて短編に仕立てた。

 

葉室麟が描く戦国の女性たちは聡明にして清らか、そして何よりも毅然として芯の強い理想的な女性である。鳳凰とは後陽成天皇が淀殿を評した言葉。

 

映画、テレビドラマで描かれてきた淀殿は、容姿端麗なれど、わがまま放題にして思慮に欠ける女性として描かれることが多い。しかし、その実像など、現代人の誰も与り知らぬこと。葉室麟の描く女性のようであったと思いたい。

 

その他『孤狼なり』、『鷹、翔ける』を収録。

 

 

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