文庫本に集英社新刊案内10が挟んであった。注目の新刊に安部龍太郎〈集英社文庫〉『士道太平記義貞の旗』と〈単行本〉『蝦夷太平記十三の海鳴り』が紹介されていた。『義貞の旗』はすぐに手に入れた。

 

「太平記」を数年前から読みたいと思っていたが、手を出せないままに月日が流れた。きっかけは熊本県山都町にある清和文楽を観たことにある。文楽にとり上げられている題材が太平記をもとにしてあった。日本と日本人を知るには「太平記」を知らなければならない。そのように思った。だけど、本物の「太平記」をいきなり読むのは荷が重すぎる。文楽と同じように「太平記」を素材にした小説があればいいのだが、そのように思っていた。この本は、そこにはまった。

 

 

さて、文庫本の裏表紙

討幕の機運が高まる鎌倉末期。新田義貞は、壱岐に流されていた後醍醐天皇方として挙兵し、大塔宮護良親王、楠木正成、足利尊氏らとともに、ついに鎌倉幕府を滅ぼした。しかし、天皇親政もつかの間、反旗を翻し始めた足利氏の追討のため、義貞は自らの義に従って出陣するが・・・・・・。帝に忠節を尽くし続けた太平記の雄の劇的な生涯を描ききった安部版「太平記」第2弾。

 

以上のように記してある。物語の始まりは、北には赤城山がつらなり、南には利根川が流れている新田荘。すると義貞は、鎌倉幕府の命により京都大番役として鎌倉、そして京へと赴くこととなる。大番役は内裏や院の御所の警護にあたるのであるが、先帝・後醍醐天皇が流罪となり、先帝に与して謀叛した者たちを封じ込め、中でも大塔宮護良親王、楠木正成らを捕らえるのが役目であった。

 

そして千早城にこもる正成を攻めるのであるが、そこに現れたのは先帝方の山海坊。そして大塔宮護良親王に引き合わされる。

 

いや~、これは面白い。太平記は登場人物が多すぎて人間関係が複雑である。これをわかりやすく物語を前に進めるのは至難の業。だけど、小説は敵味方を織り交ぜながらこれを解きほぐしていく。この本は当たりだ。筆のさばきによって自然に川の流れになっていく。

 

新田義貞が鎌倉幕府を倒すも、その後、足利尊氏との争いに負けるという大きな流れは誰しもが知っている。いつ始まりいつ終わるのかという如く、果てのない物語であるが、小説を読みながら、なぜか子供のころ本を読んでいたときのような気持ちになる。どこか懐かしいような、よくは知らないのになぜか知っているような・・・。

 

日本人の誰もが心のどこかに抱え込んでいる心情。心のふるさとを訪ねるような心地がする。

 

安部龍太郎『婆娑羅太平記 道誉と正成』も読んでみようかな。

 

 

ペタしてね