宇土市のカメヤ書店に立ち寄ったときに見つけた
加治将一「西郷の貌(かお)」
新発見の古写真が暴いた明治政府の偽造史
帯に次のように書いてある。
なぜ維新英傑の顔は消されたのか?その写真には若き日の西郷隆盛の姿があった。合成の肖像、似ても似つかぬ銅像を造ってまで偽のイメージを植え付けようとした真の理由とは……
幕末から明治維新にかけての英雄西郷隆盛がなぜに西南戦争に巻き込まれ、不運の死に至ったのか。征韓論に敗れて下野し鹿児島に引きこもった西郷を、廃藩置県により職を失った不平不満の士族が担ぎ上げたことになっている。
西郷隆盛、余りにも愚かなりという印象を抱かせる。しかし、本当にそうだったのか。何かしら釈然としないものが残る。この疑問をずっと抱き続けていた。なにかしら納得のいく説明をしてくれるのではないか。この本を手にしたとき、そのような期待をした。
しかしながら文庫本を車のケースの中に放り込んだまま忘れていたくらいであった。あるとき始めの部分を読んでみると、全くのフィクションであり荒唐無稽にして好き勝手な推論を並べた代物ではないかとそのように印象を持ったので、再び放置してしまった。そして再び手にして読み進めると、中ほどからは夢中になってしまった。
キーワードは「尊南朝」で、倒幕を推進した力は何だったのか。それは南朝革命ともいうべきものではなかったのか。「尊南朝」これが加治将一「西郷の貌(かお)」を貫いている。
真偽のほどは定かではない。がねに判定する能力や知識はない。ただし、なんとなく肯けるような気がしてくる。今ここで結論付けるのではなく、抱き続けた疑問は先送りということになろうか。

