12/5(土)熊本市民劇場。「くにこ」の脚本は中島敦彦。

観劇に出かける前に書いたとおり、向田邦子の物語がどのような脚本に仕上がっているか、それを確かめてみたいと思った。


その結果は「ブラボー!」。

数少ないが、これまでに観たどの演劇よりも素晴らしかった。

テンポよく畳み掛けるような展開に、分かりやすく面白い。笑いと涙があり、登場人物は必ずしも褒められたものではないかもしれないが、それぞれに愛すべき人々である。愛するが故の苦悩と葛藤が描かれ、登場人物の生き様には奥行きと深みがある。


中島敦彦は脚本のベースにした向田邦子の作品を知り尽くしていることが分かる。がね如きがブログで、皮相、軽薄にして好き勝手に書きなぐっていることを恥ずかしく思う。始めから比較にも何もならないのは分かっているとしても。


kuniko


これは本物を観たのだ。

演じる役者さんが素晴らしい。

主役も脇役も素晴らしい。

演劇の始まりはくにこが父の転勤で鹿児島の小学校を去る場面から始まる。担任教師の鹿児島弁のセリフは、完璧な鹿児島弁であり、ユーモアがあり、いきなり舞台に引き込まれてしまった。祖母を演じる女優も、もちろんくにこを演じる女優も・・・。

「すごい!」

脚本、役者の演技の隅から隅までなんてすごいのだろうと圧倒された。


向田邦子の著作「父の詫び状」を始め、その他の作品に描かれているエピソードが脚本に取り入れられ、戦争前後の時代の庶民の生活が描かれ、鹿児島、高松、東京の家族の物語がハラハラドキドキで展開する。そして小学生のくにこが作家に成長するまでが描かれる。愛と苦悩の真っただ中にあっても、明るく前向きで愛情あふれる生き方が胸に迫る。


もう一度言いたい。これまで観た中で最高傑作だった。熊本市民劇場はやめられないな。チャンスがあれば、皆さんも是非ご覧ください。