越後遠征登山のときの初日、南魚沼市「野の花館」に行った。外山康雄さんが描いた野の花の絵画を展示してある。絵画の前には実物の草花がある。そこで本を買ってきた。


画・外山康雄 文・池内紀「野の花だより365日(上)百花繚乱の春から木の葉いろづく秋(下)錦綾なす秋から山ほほえむ春」の2冊である。4月1日から始まり3月31日まで、まるで絵日記のようである。


かつて野の花に関する図鑑を数冊は購入した。わらにもすがる思いであった。草花を知るうえでのとっかかりが欲しかった。ほんの2年前まで植物と無縁の生活を続けてきて、薔薇や朝顔くらいしか知らないことに愕然とする思いだった。


それこそ草花に興味を持ち、何か1つでも覚えようとしても、何一つ覚えられないという虚しさを感じた。


2年前になる。九州でカタクリの花を見ることができるのは、ここが南限といわれる目丸山に行ったときのこと。運よくカタクリの花を見ることができてうれしかったのだけど、山を歩く途中で鮮やかな薄緑色の葉っぱの塊りがあるのを見つけた。さてこれはいったいなんだろう。そう思うが、まるで初めて見るものであり見当がつかない。そこを通りかかった人が「コバイケイソウじゃないかな」と教えてくれた。それから家に帰るまで「コバイケイソウ、コバイケイソウ」と呪文のように唱えた。そして自宅に帰り、おもむろに植物図鑑を広げ、そしてコバイケイソウを見つけた。


野の花365日


思えば、これが始まりだった。このように誰かに教えてもらえば、その名前をメモし、写真を撮る。そして図鑑で調べる。最近はネット検索で調べることが多くなった。「誰かに教えてもらうことができれば」というのがポイントであって、誰も教えてくれなければ分からないままになる。


今では“うき山の会”のメンバーに教えてもらうようになったので、少しずつではあるが、実際に目にして覚える機会が増えてきた。依然と比べれば、雲泥の差である。


おっと、またまた脱線してしまったというか、前置きが長すぎた。何が言いたかったのかというと、植物図鑑を漫然とページをめくりながら単に草花を覚えるというのは至難の業であり、従って、なかなか図鑑を開くことがない。


ところがである、外山康雄「野の花だより」はもうすでに3回以上は一通り目を通した。覚えようとか思わなくて、草花のイラストと名前を確認するくらいであるが、苦にならずに眺めることができるのだ。

買ってよかったと思う。