宇城シティーモール内TSUTAYA、昭和の映画コーナーでDVD「火まつり」を探したとき、黒沢明監督作品が並べてあった。
たまたまその日、洋画に用がありの探偵さんからメッセージが届いていることに気づいた。受信からすでに1週間を過ぎていた。メッセージの内容は、「隠し砦の三悪人」は菊姫を擁して秋月の再興を図ろうとする物語だというお知らせだった。
黒沢映画をリアルタイムで見たのは晩年の作品であり、全盛期の映画をほとんど見ていない。「火まつり」がなかったので、その代わり「隠し砦の三悪人」を借りてきた。
映画の秋月氏は山名氏により滅ぼされたため、国境の山奥の隠し砦に菊姫は匿われていた。三船敏郎扮する家臣が秋月の姫と埋蔵金を同盟関係にある早川領へと連れて逃げる話である。
映画と実際の秋月とは関わりないと思うが、秋月の城は古処山の山頂に築かれていた。また戦国時代を通じて栄枯盛衰を繰り返してもいた。イメージとしては背景が合致している。
黒沢映画を観ると、映像は躍動感があり、人物の描き方は巧みであり、ハラハラドキドキの見事なエンターテイメントに仕上がっていた。狂言回しとなる敗残農民兵の二人が笑わせてくれた。
「隠し砦の三悪人」は織田裕二主演でリメイクされたが、織田裕二では観る気がしない。「椿三十郎」で懲りた。それは余談だったが、三船敏郎らが山名領を通り抜けようとするときに火まつりのシーンがある。
燃え盛る炎を囲みながら農民たちがエネルギッシュに歌い踊る。この世とは思えないような陶酔が人々を支配する。何が起きても不思議ではない異次元の世界が現出する。
映画「火まつり」のシーンもかくやあらむと想像したのであるが…。

