上通(かみとおり)の「くまむら」で宴もたけなわ、騒然とした雰囲気の中、ポールと話をすると、この後、八反田のミュージックハウス「ジョーサン」でクリスマス会だとかなんだとかがあって、ポールのバンドの定期演奏会ではないけど、行くことにしているという。
「それじゃ、俺たちも行ってみるか?」
と声をかけてみると、文政の同級生全員が
「お~~!」
と実に軽いノリで「ジョーサン」に行くことになった。
一人、二人で「ジョーサン」にいるとアウェイ感があって、意気が上がらないこともあるのだけど、”みんなで渡れば怖くない”の例えの通り、どどど・・・と繰り出した。
「ジョーサン」の店内は満員の状態だったが、ステージ前の特等席が空けてあって、文政モンを待ち受けていた。後から思えば、「ジョーサン」には洋楽好きな少年少女やおじさんおばさんたちが、自ら演奏する機会を待っているのであって、ある程度の出番が決められているのだ。そこに文政モンが酔った勢いでなだれ込み、
「俺たちにも歌わせろ」
と我々は傍若無人の振る舞いなのだが、客層のレベルが高く、紳士淑女の集まりと思しき人たちの控えめな優しい眼差しと暖かい包容力を感じた。それというのもポール井上の同級生だからという保障というか担保があるからであって、そうでなければ店からつまみ出されたとしてもしかたがないのだ。
で、一番に歌ったのが、何を隠そう、このがね。
ポールがすぐにギター、ベース、ドラムの人をステージに集めてくれた。「旅人よ」を歌詞カードを見ながら歌ったのだけど、暗くて文字がよく見えないし、足を間違えたり、入りが遅れたりと、鼻からハタクソでもあるのだけど、バックでサポートしてくれるバンドのお陰で気持ちよく歌わせてもらった。
それからは元々出番が決められていたであろう人々が万全の準備をしてきた曲を演奏し始めた。オリジナルあり、なつかしの洋楽あり・・・。
その間に、文政の同級生ま~ちゃんも「歌う」といって「空に太陽がある限り」をひっさげて急遽ステージに立つ。さすがに不知火虎一一座で場数を踏んでいるだけあって、なかなか見事な歌いっぷりであった。
「その選曲はなんだ?」といぶかしむ向きもあるだろうが、ノリの良いバンド演奏に乗って、ノリよく歌えば、みんなが楽しめるハッピーソングなのだ。
「ジョーサン」の品の良い常連さんからすれば、文政モンは異邦人なのかもしれないが、マスターのジョーサンが「文政、文政」と連呼して暖かく迎え入れ、しかも丁重なる見送りまでしてくれた。ポールは気をつかっただろうけど、とっても楽しかったよ。


