幼なじみじじいコンビが、下町を舞台に大暴れ!
幼なじみの政と源の2人は74歳。
政は銀行を勤め終えた後、カミさんは娘の家に行ってしまい、墨田区Y町、運河沿いの古ぼけた一軒家で一人住まい。
源は簪(かんざし)を作る職人で、20歳前の弟子がいる。
二人の周辺で様々な出来事が起きる。
笑いと涙のドタバタ劇が展開するのだが、こんなセリフが飛び出す。
「俺は、死後の世界なんてないと思ってる」
「妥当だな」
「俺が思うのは、死んだ人間が行くのは死後の世界なんかじゃなく、親しい人の記憶のなかじゃないかってことだ」
“なるほど”と思う。
74歳の男性ならば、平均寿命でいえばもうすぐ終わる年齢、何を成すにも人生のたそがれを迎えた悲哀が漂う。しかし、政と源の掛け合い漫才のようなやり取りからは、笑いとともにしみじみとした味わいが醸し出される。
有田浩「三匹のおっさん」は定年を迎えたばかりの60代で、“まだまだじじいじゃないよ、おっさんだ”と元気いっぱい。
74歳を迎えた政と源は、口だけは達者だが身体がかなわない。
五木寛之の新聞に連載中の「親鸞(完結編)」の親鸞はやがて波乱万丈の生涯を終えようとしている。
老いを迎えた人々の物語が胸を打つ。
これは蛇足だが、30年ほど前に「死ぬための生き方」という本を買った。もうそんな本もいらないのではないか。
自然に任せればいいのだから。
