五木寛之の新聞連載小説「親鸞(完結編)」304夢まぼろしのごとく(2)、平成26年5月8日(木)掲載。
親鸞は竜夫人と対面した。
「まさか。鹿野、どのか。」
「はい。越後から京へまいった、鹿野でございます。」
完結編の連載が始まり、竜夫人が登場したとき、竜夫人とは何者なのか、興味を抱いた。そして、親鸞の物語に欠かせない存在である、紫野と鹿野の姉妹がいるのだが、紫野は親鸞の妻、恵心。そして鹿野は杳として行方知れず。数奇な運命に翻弄された鹿野がどこでどうしているのか、心配でならない気持ちが、常に心の隅にあった。
このことを明らかにしてもらわなければ、“銭を返せ!”と作者の五木寛之を訴えてやるところだった。これでホッと胸をなで下ろすとともに、親鸞の物語が終わりに近づいたことを知らされる。
もう一つ、善鸞がどのようにして破門されるに至るのか。その妻、涼(すず)がそのことにどのような関わりを持つのか。このことが明らかにされたところで、親鸞の物語は幕を閉じるだろう。
親鸞と親鸞を取り巻く人物たちによる生々しい人間ドラマに惹きつけられて、待ち遠しく朝を迎えていた読者の日々にも終わりが近づいた。

