Dr.ホンダと酒を飲む機会は多かった。外で酒を飲むといえば、それはDr.ホンダに限られていた。ジュンちゃんも一緒だった。


 Dr.ホンダはかつてハンディ・キャップが6だったことがある。いわゆるシングル・ゴルファーだった。ジュンちゃんもゴルフをしていた。それで、どうしても酒の席でゴルフの話になった。


 同級生からゴルフをやらないと誘われても、ゴルフを始めることなくきてしまったがねだったが、酒の席でゴルフの話をすることができないのが残念極まりなかった。それで、Dr.ホンダと酒を飲むのであれば、ゴルフをやるしかないとの思いに至った。


しらぬいのがね-満天


 Dr.ホンダから出された条件は、週に3回、ゴルフ練習場に通うことを約束させられた。半年間はゴルフ場でゴルフをしてはならないというものだった。


 だけど、どうしてもゴルフ場に行きたくって仕方がなかった。そのときはまだ自分のクラブを持っていなかった。兄の武揚が使わなくなったクラブを使わせてもらっていた。


 まもなく「見るだけだ」ということで、ある土曜日の午後、あつまるレークCCの前身、東南CCでカートに乗った。見るだけの約束だったが、実際にボールを打たせてもらった。


 一番驚いたのが、パットだった。何回打っても、一向にカップにボールが入らなかった。勘なしだった。ショットにしても同じ。なかなか前に進めなかった。もう数えきれないほど打った。その後は、なかなか誘ってもらえなかった。


 はっきり言って、がねはゴルフのセンスがなかった。体力もなかった。だけど、熱意だけはあった。


 ゴルフ場のエントランスに入るときには胸が震え、エキサイトした。嫌々だったろうが、誰もが一緒にラウンドしたがらないときに、つきあってくれたのがDr.ホンダだった。ゴルフをしたいがためにDr.ホンダに付きまとっていた。