ゴールデン・ウィークの職場はやっぱりヒマだった。「グラックルの落ちた朝」を読み終えて、古木信子著「寒の森」も読み始めた。まさしく一気読みだった。
本の帯には次のように記してある。
―今日はとんでもない内緒のお願いがあるのです―
「一度だけでいいでので夫とデートして頂けませんか」
夫の憧れの女性にハガキを出す妻の不思議を問う「寒の森」
日々の哀しみを見通す著者の静かな視線がここにある。
「グラックルの落ちた朝」「銀色の魚」の二章を加え、熊本のストーリーテラーが放つ三つの女の物語
正直にいうと、文学は少し目を通したことがあるくらいで、ほとんど読んでいない。読んでも分からないからで、読んだ本といえばベストセラーといわれる流行の本か、翻訳ものばかり。こういうのは分かりやすいし、面白いから。
だけど「寒の森」はとても面白かった。こういうものをやっと読めるようになったのだろうか。いや、まだ読めるというほどのことはないだろうけど、文章にぐいぐい引き込まれてしまった。
古木信子さんはまさしくストーリーテラーだ。
読者としては、次々に展開されるストーリーや登場人物の気持ちに思いを重ねながら、エキサイティングな体験を共にすることになる。
「私」とボランティアで訪れた「松田」との秘められた体験など、川上宗薫をも彷彿とさせたなぁ。