同級生に新年会の連絡を入れたときのこと、カズくんが「テレビで見たよ」と切り出した。障害者雇用に関してテレビに映ったがねの姿を車の中で見たらしい。
車には複数の人がいて、カズくんが「同級生だ」と言ったら、他の人が「それはない」と応えたらしい。「テレビに映っている人物は老けている。目の前にいるカズくんと同級生であるはずがない。」というのだ。
カズくんは農業を営み、同時に地域の漁業組合の組合長をしている。体格がよくて、真っ黒に焼けた顔つきも精悍だ。ポイントは髪の色。カズくんは短く刈った頭で真っ黒。がねは中途半端に伸ばした髪が弱々しく左右に乱れ、ほぼ真っ白。一目見ただけで、老人。だから「同級生であるはずがない」と、テレビでがねを初めて見た人が言ったのだ。
客観的な事実というのは、こういうものだ。身近な人は見なれた顔で違和感がないのだが、初めて見た人には違いが分かる。知らない人に対してだから遠慮なく物が言える。
空想の世界に遊ぶことで現実逃避を続けているがねとしては、リアルな言葉に直面したことになる。事実をそのまま受け止めるって難しいんだな、これが。年相応に生老病死に備えをすべきときが来ているのだが。