日韓併合時の朝鮮に話を戻します。日本政府による創氏改名政策の任にあたっている県職員が、改名を拒んでいる地主の説得を命じられ、彼の邸宅へ赴くところから物語が始まりました。


 欧米列強から朝鮮を守ってくれるからと日本軍に莫大な量の米を献納する親日家の地主でしたが、族譜を持ってきて、先祖代々受け継がれてきた名前を変えるわけにはいかないと拒みます。


 頑なに改名に応じない地主の周辺には、次々に日本政府による圧力がかかり始めました。苦しむ娘や孫のために地主は改名に応じましたが、その日、自宅の井戸に身を沈めて死を選ぶのでした。


 もの静かで心やさしい日本人が、「愛国心」という言葉を使うようになったときは危険だと、劇中で娘が語ります。軍人だけでなく、公務員もまた、勤勉でまじめな日本人が職務を忠実に遂行すると周囲のことが見えなくなってしまうのだと・・・。


 ※族譜とは、韓国朝鮮で一族の代々の当主が、家系図とともに、それぞれの時代のできごとを書き残し子々孫々に伝えるもの。