「闘想家」“Show”大谷泰顕の『世の中バカなのよ』(回文) -4ページ目

Step.63 IGFとは「顔面アリ」の世界である!〈後編〉

さて、21世紀になってからもうすぐ20年。
時は流れても、やはり「顔面アリ」への反応は様々であります。

実際、『INOKI BOM-BA-YE 2015』(12月31日、両国国技館)で行なわれた、
藤田和之×澤田敦士戦においては、
澤田が藤田の顔面パンチで眼窩底骨折の憂き目に遭ったとか。
「議員レスラー澤田 失明危機! このまま引退も」(『東スポWeb』より)

顔面パンチ
(※写真は全てBSフジで放送された『INOKI BOM-BA-YE 2015』中継より)

これを以って言えるのは、もし仮に藤田が
最初から澤田に致命傷を負わせるつもりでリングに上がっていたか否か。
そこが問われるのかもしれないけれど、
「猪木イズム最後の継承者」とまで呼ばれる藤田に限って、
そんなことは決してあり得ないのだから、
やはりそこはアクシデントとしか言いようがない「現実」なのであります。

藤田

澤田

それでもそういったアクシデントを呼び込む可能性がある
「顔面アリ」は是か非かと問われたら、
なかには絶対的に「非」を叫ぶ方もいるでしょう。

しかし、たとえ「現実」になにが起ころうとも、
猪木の世界観においては、
決して公に「非」と言ってはならない!
自分はそう確信しておるのです。

だって仮に「非」と言ってしまったらその時点で、
おそらく猪木が最も伝え残していきたい
「凄み」を失っていくきっかけを誘発してしまうから。

これは『PRIDE最後の日 「殺し」の継承』でも書いた通り、
猪木の世界観で必要とされるのは、
例えて言うなら学校の授業で勉強する「受験英語」ではなく、
社会生活でも通用する「実戦英語」なのであります!

だからといって現在のように完全競技化してしまった、
『UFC』のような世界観のなかで
かつて格闘技界に存在した「顔面アリ」への渇望や本質が、
どこまで今後、この国に息づいていくのかを思う時、
自分にはどうしても疑問符が付いてしまう。

なぜならそこに存在する「現実」とは、
ともすれば合理的な価値観しか認めない世界観を“絶対”としてしまうから。
これは決して『UFC』への批判ではなく、
その世界観を十分認めた上での問題提起とでも思ってもらえれば。

もちろん自分だって合理化することによって
手にするものがたくさんあることも知っているけれど、
「顔面アリ」は普段から公にするよりも、
隠し持っていざという時にその刃物を抜くからこそ、
そこに表現者として求められる色気や、ファイターとしての奥行きが
「凄み」の一端となって現出されていくのではないか。
自分には漠然とながらも、そう思えてしょうがないのであります。

ともあれ、諸々含め、ここで昨夏の『GENOME34』
(8月29日、両国国技館)のパンフレット上で行なった、
猪木インタビューの一節を用いて、この項を御開きとしたく思います。
多少投げっぱなしなことを認めた上で、
それではみなさん、御機嫌ようさようなら!
(『ワールドプロレスリング』の古舘実況風)

あ、最後にもうひとつだけ
(『相棒』の杉下右京風)。
やっぱり猪木って凄えなー!!!

――そういえば猪木さん、最近、『真説・長州力』(集英社)という本が
出版されたんですけど、その中で長州さんが「(猪木戦の際に)殺せと言われた」と。
「長州、殺せと。そのとき、うわっと反応するものがありました。
この人はそこまで行く人なんだと」といった記述があるんですね。


猪木 今の自衛隊じゃないけど。要するに自衛隊にはリスクがない、
というような答弁が、安倍晋三総理からあった。
でも、そんなリスクのない自衛隊なんてあり得ないし、必要ともされない。
そこが言葉の嘘というか。そこで「(俺を)殺せ」の話になるけど、
そこまでやっているのに嘘はないんですよ。だって本望じゃないですか。
リングで死ねたらね。

――ああ……。

猪木 「生」というのはそんな単純なものではない、
と言うかもしれないけど、要するに命を懸ける。
いつもみんな言うでしょう。「命を懸ける」って。
その一瞬一瞬、毎回毎回そんなわけにはいかないかもしれないけど、
「命を懸ける」という気構えかな……。

――「殺せ」と言われた長州さんの心境も計り知れないですけど、
それを言葉にした猪木さんも想像を絶するなあと。


猪木 いや、非日常的というか、ファンの夢として、
自分たちには手が届かないかもしれないけど、
夢として、そこまでやるのかと。
それがリングから送るメッセージなわけだから。
いろいろ体現しながら。

2016年2月25日                       “Show”大谷泰顕

Step.64 「見物」は悪! 「観察」こそが善である!〉に続く】







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