【書評】とぶ! 夢に向かって: ロンドンパラリンピック陸上日本代表・佐藤真海物語 | 小腸がなくても平気です!〜しょーへーのブログ〜

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23歳の時に「原発性小腸軸捻転症」という病気にかかり、それ以来小腸がない状態で生活している日々をゆるーく綴っていきます。

とぶ! 夢に向かって: ロンドンパラリンピック陸上日本代表・佐藤真海物語 (スポーツノンフィク.../学研マーケティング

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2013年9月、2020年の夏季オリンピック開催地が東京に決定し、日本中が盛り上がりました。その開催地を決定するIOC総会にて、「お・も・て・な・し」の流行語を生み出した滝川クリステルさんや、その後の不祥事で世間を賑わせた猪瀬直樹知事(当時)と共に、パラリンピック選手の代表としてプレゼンを行ったのが佐藤真海さん。

残念ながらその頃私は佐藤さんの存在を知らず、ただ「キレイな人やなあ」くらいにしか思っていませんでした。しかし、ブログで偉そうにパラリンピックについて語っておいて彼女について何も知らないのはマズいと思い、ググってみると著書が見つかり電子書籍版を購入。

ルビが豊富に振られた小学生向けの本です。小学生たちに夢を持って何事にも取り組んで欲しいという思いを綴っています。佐藤さん自身の体験と現在の取り組みに基づいているので、大人でも読み応えのある内容です。

宮城県気仙沼市で生まれた佐藤さんは、子供の頃から男の子に混じってスポーツに親しみ、中学から本格的に陸上競技を開始。大学入学後は応援部のチアリーダーとして活動するも、2年生の時に骨肉腫を発症し、右足の膝から下を切断します。

それでもスポーツをしたいという思いを捨てきれず、義足を着けて走り幅跳びに挑戦。リハビリと練習を重ね、ついにパラリンピックに出場します。そこに至るまでの、膝から下を失ったことの苦しみ、辛いリハビリの日々、以前の友達との距離感など、幾多の葛藤が生々しく綴られています。

ただ、大企業に総合職として入社できる学歴と能力、家族からの手厚いサポートなど、競技に専念できる環境が今の彼女を作り上げたことも事実。マイナースポーツでは第一線で活躍する選手でも、金銭的な支援が受けられず競技に打ち込めない選手もいます。足を切断したことは大きな困難であったでしょうが、スポーツ選手として活動する環境が整いすぎている感は否めません。

結局、今の日本においては、何をやるにも「家庭環境」「学歴」がキーになるのではないか、と思ってしまうのですが、家庭環境はどうしようもないにせよ、学歴は努力次第で何とかなります。夢を叶えるためにいちばん必要なのは学歴、学歴を得るために勉強することです。

家庭環境、学歴、さらに美貌まで兼ね備えた佐藤さんですが、その恵まれた環境は決して自分だけのために活かしているのではありません。ここ数年は、競技を続ける傍ら、大学でスポーツ科学について学び、障害者スポーツの普及に携わっているのです。それはまさに佐藤さんにしかできないこと。足の切断という悲劇を経験しても、自分にできること、やるべきことをしっかり見据えて日々努力を続けています。その姿は誰もが見習うべきだと思います。

努力しなければ夢は叶いませんが、いくら努力しても叶わない夢もあります。「夢は必ず叶う」なんて口が裂けても言いません。世の中には自分の力ではどうしようもない力が働いています。だからできないことはできないと割り切る。でもできることは最大限に努力する。その中でやるべきこと、やりたいことをしっかり見据えて、実現に向けて努力すれば、人生がもっと楽しくなるのではないかと改めて気づきました。




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