今回同時真打になる他の四人は前座時分から一緒に修業した仲間です。出来れば全員の披露目に手伝いに行きたいし、口上も見たいし高座も聴きたい。ところがコロナのせいで楽屋に気軽に行けない状況にあります。


 そんな中ですが㐂三郎兄さんの日はできる限りお手伝いに行きたい。一緒に会をやってきたし、方々にプライベートで旅行にまで出かけた入船亭戦友(わかる人だけで 笑)。だから密にならないのを確認して出かけています。


 㐂三郎兄は高座のイメージと違って実は冷静沈着で考えが複雑な大人な人でもあります。あんなに動いてて落ち着きがない子供みたいな人なのに(褒めてます)じっと考えてる時の実に多い事。いっぱい動いて喋ってる時は㐂三郎兄がリラックスしてる時、むしろ普段は胡座をかいてじっと考え込んでたり民俗学の本や諸星大二郎や水木しげるを読んでたりします。変な人です。


 だから長い付き合いですが、本心を窺い知ることが出来ない場面も僕からすると案外多い。そんな兄さんが初日の「船徳」を終えてさん喬師匠をはじめ多くの楽屋仲間からお祝いで三本締めされてる瞬間は少し目が潤んだように見えました。㐂三郎兄が感極まってるところなんて殆ど見たことがありません。それを見て僕も少しグッときてしまい涙ぐんじまいました。泣かすなよ、きさっぺ。もちろん終わるとすぐにいつも通りの子供っぽい笑顔に戻っていましたが。


 二日目の今日も空く頃を見計らって楽屋入りしました。今日は「愛宕山」でした。こちらもよく動く兄さんにぴったりの演目。僕も春には演るネタですがやはり演出が色々と異なります。満席の客席を友達のようにフレンドリーな空気にして、縦横無尽に一八が動いてました。負けてられません。お手伝いに来て良かったなと思いながら鈴本を後にしました。是非とも新宿末広亭以降もパワフルな兄さんの高座を聴きにいらしてください。面白いですよー!


柳枝