{A648D7B2-02F1-4F1E-8A4A-05032B64152B}

{59A4FED5-9A78-4D7D-A066-283912FB41BB}

3月下席初日。
今日から我が落語協会は真打披露興行が始まる。
夜席が披露興行。
私は昼席に顔付けされている。
朝、師匠正朝宅へ挨拶に行く。

雨のため東横線が今朝も遅れる。
おまけに半蔵門線が途中で運転見合わせ。
あーイライラ。
やっと動き出して駅に着いたから急いで降りる。
歩き始めて気がついた。

着物の鞄が無い…!

そうだった!
雨で床が濡れてるから網棚の上に乗っけたっけ。
遅れてるから慌てて降りたら見事に忘れた。
全身から血の気が引く。

でも降りたばっかりだからすぐに見つかる。
そう高を括ってた。
駅員さんに言って捜索を頼むが見つからず。
仕方ないので遺失物捜索をお願いして師匠宅へ。

そのうち「見つかりました」と電話が来るはず。
ところがなかなか連絡がこない。
今日は鈴本の昼席の出演がある。
出番までに着物が出てこないとマズい。
師匠に正直に鞄を無くしたことを伝える。
おかみさんと師匠が「あちゃー」という表情。

ちょうどそこに師匠の家の近所の呉服屋で
誂えてあった新しい僕の着物が届く。
なんというタイミング!!
不幸中の幸いとはこのことか!

でも着物だけではもちろん足りない。
長襦袢や帯や羽織やら必要なのだ。
すると師匠「こっちへ来い」と和箪笥の前へ。
「新しい着物は何色だ?」
「薄い紅色です」
「じゃあこの色だったら合うだろ。
もう昼席は間に合わないから俺のを使え」

羽織と帯と長襦袢を貸してくれました。
まるで「紺屋高尾」の親方のようです。
あー師匠…不肖の弟子で申し訳ありません。
ありがたくお借りする。

肌着類は借りるわけにはいかない。
鈴本近くの呉服屋で肌着類を購入。
うひゃー高い!でも背に腹はかえられぬ。
これで一式揃った。
鈴本の高座はおかげさまで難無く凌げる。
賑やかなお客様で私は「寄合酒」を一席。

高座を終えて師匠宅へ借りた一式返しに行く。
するとそこに鞄が押上駅に届いたと連絡がくる。
「見つかってよかったですね」と駅員さん。
なんと親切なんでしょう。
丁重に御礼を申し上げる。

そんなわけで無事着物が戻ってきた。
届けて下さった親切な方
東京メトロの駅員さん
師匠におかみさん
タイミング良く届けに来てくれた呉服屋さん
心配をおかけした皆様ありがとうございます。
遅延でイライラしちゃいけないですな。
以後気をつけます。

でも師匠の長襦袢と羽織を着られたのは嬉しかった。
滅多に着られないものね。
もう迷惑はかけられません。