進め!正太郎


なんだかここのところ映画をやたら観てます。

きっと僕の中での冬の映画祭なんだと思いますにひひ

そろそろ落語の事も書きますのでご安心下さい(笑) 


出会えました。日本映画の傑作ですキラキラ

切なく美しくもしっかりと心に残る素晴しい作品です映画


1990年に亡くなった佐藤泰志さんの同名小説の映画化です。

この作品の映画化がきっかけで佐藤泰志さんの絶版

となっていた作品は復刊され再び注目を集めているそうです。


しばらく見終わった後も余韻を楽しめました。

こんな映画は久しぶりな気がします音譜


☆☆☆☆☆


はい、星5つです!!映画の力をたっぷり味わえました星


舞台は原作者佐藤泰志さんの故郷の函館をモデルに

した「海炭市」。そこに暮らす人々の悲哀を交えて

淡々と描いていくオムニバス作品です雪


監督は熊切和嘉さん。この監督、きっと粋な人なんだろうなぁ。

とにかく演出がものすごく洗練されてるんですよニコニコ


説明的なショットや台詞はとにかく最小限にとどめ、

街や人の雰囲気を出すことに特化しています。


その説明の少なさはどこか不親切に感じるほどです。

とにかくこの作品は役者さんの台詞が少ないですから。


わかりやすい例がこのシーン映画


市電の運転手さんが運転席から町中を歩く青年姿に気付く。

カメラは青年を目で追う運転手さんの顔をゆっくりと映すのみ名古屋市電1400系

運転手は仕事を終えると自宅で一人夕食を食べています。

ここでは運転手と青年の関係は観客にはまだわかりません。


その後のスナックのシーンで青年が店員に呟きますカクテルグラス

自分は海炭市出身で今は東京で働いている。

出張で海炭市に帰って来ているが実家には帰らない。

父親とは仲が悪いから。


ここで観客は運転手と青年が親子である事に初めて気付きますひらめき電球

運転手と青年の孤独がじっくりと浮き彫りにされるのです。


運転手が若者を見た時に「あいつ帰って来てるんだ・・・」なんて

独り言を言ってしまったら一気に作品は野暮ったくなりますダウン

これは映画ならではの技法です。落語じゃできませんあせる


敢えて台詞は最小限。町中に溶け込む自然な空気しか撮らない。

静かな静かな画面の中に、観客は物語を読み取ろうとします。


その他にも粋だなぁと感じさせるようなシーンがいっぱいキラキラ

その細かく丁寧な技にいちいち唸らされました得意げ


加瀬亮、谷村美月、小林薫、南果歩、伊藤裕子、実力派の俳優さんが

大勢出演しているのですが、飾りっ気もなくとことん地味に撮影するから

正直本当にこの人達が出てるかどうか判別するのも難しいぐらいですにひひ


伊藤裕子さんなんて大好きなんですけど出演ワンシーンのみですよ汗

ちょっと伊藤裕子ファンとしては悲しかったです。


その点、立ち退きを迫られるトキお婆さん役の中里あきさん。

アップも多くてじっくり顔も映してもらってます。良い味出してます。

でもこの人、函館市の素人さんらしいです(笑)


熊切監督がいかに芝居臭さを廃して地味な画を撮りたかったかが解ります。

どこにでもありそうな人々の悲哀を描いた事こそ、この作品の真髄でしょうカチンコ


決して明るい話ではありません。

5つのエピソードに共通しているのは「喪失」。


彼らが失うものは家族であり、仕事であり、思い出であり、様々です。

加瀬亮演じるガス屋の損傷した足の指のショットにそれが象徴されてます。


う~ん、この作品を語ろうと思ったらもっともっと語れるんだけど

長々書いても誰も読んでくれないような気がしますのでもう止めますガーン

すでに読むのをあきらめてる人いっぱいいるだろうしあせる


是非ご覧下さい。邦画がお好きな方は特にビックリマーク

日本の映画が繊細な作りである事を再認識させられる一本です。


ちなみに音楽は年明けに僕が六本木のスーパーデラックスで

共演させていただいたジム・オルーク先生が担当されてます音譜

素敵な切ないメロディーが映画によく合っていましたニコニコ